『フィーゼ島のアリア』全ENDコンプリート後記
私、祈るわ、貴方の幸ーせをー
私、祈るわ、世界の幸ーせをー
というわけで。
少し前からプレイしていた生活SLG『フィーゼ島のアリア』を全50ENDコンプ致しました。
非常に膨大ゆえ当初はコンプまでは考えていなかったのですが、
エンドを1つ見た後、公式情報で「恋愛系エンドは各キャラ2つずつ」との情報を耳に。
それでも「各キャラ1つずつ見ておけばいいか」なんて考えてたんですが、
プレイを進めるうち、気付いてくることがありました。
「エンド2ずつ」というのはただ無意味にそうなっているわけではない。
両方見ることで、そのキャラの深みが見えてくるようになっている。
であるならば、コンプするしかありません!
長い道のりでしたが、作者様の攻略ページにも一部お世話になりつつ、
どうにか全エンドコンプ達成できたことをここに報告いたします。
コンプ後にアンロックされる特典イベントが、胸に迫るものがありました。
[攻略ページ]
http://kisaragiryouya.himegimi.jp/aria/frame-kouryaku.htm
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■ ゲーム概要
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本ゲームをご存じない方のために概要を書いておきます。
『フィーゼ島のアリア~星祭りの奇跡~』
「闇黒天使」如月燎椰様製作の「乙女向けまったり育成シミュレーション」です。
いわゆる乙女ゲー、生活系SLGです。
「フィーゼ島」に引っ越して来て一人暮らしを始める少女「アリア」の視点で、
島で出会う人々との恋愛や友情やバイトなどを通し、
パラメータの上昇やイベントの進行などを図る、というゲームです。
[ダウンロード配布ページ]
https://www.freem.ne.jp/win/game/2841
初出は2004年ということなので、私が生まれる前から存在していたんですね(嘘)
それはさておき、私が知ったのは最近なので、私が知った日が私にとっての公開日です。
あなたにとっての公開日は今日でしょうか? それとも、もっと前だったでしょうか?
以下、キャラごとに一言ずつコメントを書いていきます(大体クリア順に)。
プレイ体験を損ねるようなネタバレはしないよう心がけますが、
未プレイの方は念のため覚悟してください。
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■ キャラごとのコメント
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・スロ
バイト先で必ず会えるキャラなので、
初プレイならこのキャラ狙いが無難かなと思い、最初に狙ってクリア。
しかしその後「恋愛系ENDは各キャラ2つ」との公式情報を得て再プレイ。
占いのヒントで「方法は2つ」と言うのがその分岐の事なのだなと、
このゲーム自体の要領を学ばせて貰ったキャラです。
デートを断る時の「今日は僕しかいない」で
フィーゼ島の平和ぶりが窺えますね(城の警備員が1人とは)。
あるいは「んなわけねーだろ」という
フィーゼ島流の「ぶぶ漬けでもどうどす」なのか?!(スロ腹黒説)
・フェリオ
「妻の顔を忘れる」件について。
現代は写真や動画があるとは言え「ある人がどういう人(だった)か」は
本人がいない限り(いたとしても)記憶orイメージに頼るしかないのですよね。
そういう条件に縛られた人類として、
特定他者を如何に認識しようとするかという所に、ある種の愛の実践があるのかも。
・クライシス(※ネタバレかも)
自己肯定感低そうと見せかけて、
随所でしっかりアグレッシブな色男ぶりを発揮してくれるのはアリアに心を開いてるって事かな。
桜の精霊に絡んでいるので、「フィーゼ島のアリア」という世界を語る上で重要な人物の一人ですね。
「呪い」として考えると、桜の精霊がイジワルだなと感じないでもないですが、
桜の精霊の、というより「助けなかった」という(クライシス側の)後悔の念が本質かなと解釈。
誰もが「他人への優しさ」が巡る世界へ「踏み出せ」ると素敵だなと思いました。
(桜の精霊関連のことは別枠で後述)
・ロディ
フィーゼ島生活が板についてきた私にかかれば、
このような少年を籠絡するのは赤子の手をヒネるようなもの。
というわけでサクっとEND2つ到達。02は少し手こずりました。
スロとはショタ枠のライバルってことかな。
マーヤとの絡みも妄想が捗る感じです。
アリアとは同年代ですが、だからこそアリアの方が少しだけ大人っぽいのですね。
テンパるロディをリードする場面が「ええなぁ、ええなぁ」でした。
・ゼア様
偶然だと思いますがタイムリーなテーマでしたね。
現実の「アレ」に関しては本当のところ何が正しいのか、私には判断しかねるところではあります。
ただ、現代は何もかもシステム化され、人々は歯車にしかなれません。
それでも、そこにいるのは生身の心を持った1人1人の人間であり、
根本は人を助けたいという思いで動いていると思いたいですね。
そう、たとえ取りつく島のない俺様キャラに見えたとしても……。
・ゲル
純真ゆえにアウトローになってる感じの純情派ですね。
当初、出現条件すら謎でしたが、
このキャラを進めることで入手可能になるアイテムがあると分かり
何度も2股のアイテム調達係にしてました。
ごめんなさい、私あなたを利用してたの。
俺も嘘つきだから匂いでわかるんだぜ。何ですってキィー!
・ルゥルゥ
全キャラ中一番お世話になったキャラですね。
占いを小まめに活用するのがコツでした。コンプできたのも彼のおかげ。
自分が好きな人の恋の占いを繰り返す彼の心境を思うと、実は精神面では一番強い男なのかも。
特にEND19は深い優しさと静かな強さが滲み出ていると感じます。
・ダーダイル
ゲルとは別タイプのアウトローですね。
ゲルは社会の「はみ出し者」ですが、海賊であるダーさんは「島」の「外」から来て社会自体を揺さぶる。
既存の「私」は枠を溶かされ、有無を言わさぬ声に身を委ねる他なくなる。
と言うか、せ、台詞が……超てんこ盛りゴージャスさに悶え死ぬかと思いました。
・ジャグル
この人も海賊なのでアウトローの筈ですが、
あんまりそんな感じしないのは「頭の部下」という「組織の一員」だからですかね。
組織=秩序の枠外から迫ってくるような「悪の華」ではなく、普通にいい人そうですね。
図書館で本を読むジャグルさんを想像。もしや、戻す棚を間違えた犯人?(秩序守ってないじゃん)
・ラグナ
秩序側の優等生キャラですが、
そういう外面的評判を嫌っていて「素の自分」を見てくれる相手を求めているあたり、
ダーさんにリードして貰うとドハマリするツボが潜んでいるのではと妄想。
秩序には収まらない所にこそ人の心の琴線はあるものなのかも、とか思いました。
・リリアトス(※ネタバレ多め)
1周目は巧妙に彼の「正体」が明かされないようになっているので、
以下の文章は重大なネタバレかも。
と言っても「正体」は言わずもがなという感じもしますが、
一応、警告した上で……
↓↓↓↓
なかなか出現せず1周目だと占い対象にもならず、もしやバグ?!と疑ってしまったのは秘密です。
色々手を尽くして「ああ、空振りか……」と思わせて、
残日数の消化試合モードに入ってからのサプライズ。
ループものを思わせる発言など、恋愛END2つずつというシステムは彼のためなのでは?!
その他いろいろと、リリ氏には振り回されましたね。問答無用だよ!あははははっ!!
桜の精霊伝説の「赤き衣を身に纏う不思議な女性に出会った」というくだりと、
服屋に1つだけミスコンとは無関係の服が売られているのがヒントでしたね。
リリ様は秩序側の「頭」ですがダー氏以上に悪党ですね。
しかし「城」を「抜け出し」て「俺という個人を見て」欲しいと思っても、
どこまで行っても「生まれ」から逃げられないのであり、
実は誰よりも秩序の犠牲者なのかも。
血筋に縛られることを嫌いながらも、その立場を利用して横暴に振る舞うあたりは矛盾にも見えますが、
先祖が桜の精霊から受けた恵みも、彼にとっては「呪い」であり、
怒りや苛立ちの元だったのかもしれませんね(根っからの「ああいう人種」という説もあるか……)。
桜の精霊の恵みを受けた王家も、代を重ねるにつれ、形式的なものとなり、
「本物の愛」から隔てられるようになってしまったというのは皮肉ですね。
そういうタイミングでアリアがやってきたのも
「桜の精霊が導いた恋の物語」なのかも、なんて思いました。
・友情系各種
乙女ゲーですが性別問わず攻略対象キャラが豊富なのがフィーゼ島。
意識しなくてもイベントが進んでたりしますが、発生場所が散らばってるので、
こちらから会いにいくのは難しい場合が多く、
意識して特定キャラを狙ってルートを進めるには島全体を熟知している必要があり、
「やりこみ枠」という感じですね。
「そういえば、あそこであのキャラが登場したっけ」など、経験則を集積して進める感じ。
ふと思ったのですが、友情枠はローゼ以外全員、この島の元々の住民ではないんですね。
たまたまアリアと島で運命が重なった人たち。
それからもう一つ思ったのですが、
出会いシーンにアニメーションが用意されているキャラの半数が友情枠ですね。
明らかにオマケキャラとは思えない作り込み。
ある意味、用意されている他の「イイ男たち」以上に、
一人一人の別個の人生がそこにある、という感じがいたします。
・ノーラ(※ネタバレ多め)
友情枠ですがノーラだけは一括りにせずに言及しておきたかった。
えも言われぬラスボス感のデカさ。
ある意味、最重要キャラかもしれない。
仮に、他のキャラを差し替えたとしてもノーラだけは外せない気がします。
このキャラがいてこそ「フィーゼ島のアリア」が成立するのではないか?
他の「イイ男」たちとの恋愛ルートを幅広く把握していないと
ノーラのイベントを進められない内容になっています。
それでいてゲーム中盤で必ず登場し、
このゲームをプレイする限り、対決は避けて通れない。
「アンタも相当やるよねぇ?あんなにイイ男たち、騙してさぁ……。手玉にとって、楽しい?」
本ゲームはいわゆる「乙女ゲー」の筈ですが、
そのフォーマットに根底からツッコミを入れてくる。
一つの解釈として、
「アリア」と「ノーラ」と「イイ男たち」
という3要素が「フィーゼ島のアリア」の全体的な構図になっているように思います。
そこへ「桜の精霊伝説」という、ある種の「訓話」が縦軸となり、
プレイヤーへの問いかけが行われる。
「女ってそう。上辺だけでしか見ない女が全員大っキライっ!!!」
この「女」は「男」に入れ替えても同じなのでしょうね。
クライシスへの突撃の役回りを担っていることも見逃せません。
ノーラは桜の精霊の「攻撃的な側面の顕現」なのではないか? そんなふうにも思わされます。
・桜の精霊伝説(※ネタバレ多め)
「フィーゼ島のアリア」全体の縦糸というか背景になっている要素ですね。
(引用・要約)
> ――昔々、といってもそれほど昔じゃなくて
> フィーゼ島には一本の桜の木がありました……。
> そこへ一人の若い男性が道を歩いてやってきて
> 一人のお婆さんが桜の木の下で蹲っているのを見つけ、優しく声をかけました。
>
> お婆さんは、苦しげに身を震わせるだけ……。
> 男性は声をかけながら、そっとお婆さんの震える肩に手を差し伸べました。
> 『大丈夫です。もう大丈夫ですよ。
> ですから、痛いところがあったり苦しいところがあるなら、教えてください』
> ……その時でした。
>
> 思わず目を覆いたくなるような眩い光が辺りを照らし、
> お婆さんの体は見る見るうちに……美しい女性の姿へと変化していったのです。
> 『私はこの桜の木の精霊……。親切な若者よ、そなたの血筋に永遠の愛の栄光を約束しよう』
> ……それ以来、桜の精霊の愛の恩恵を受けた男性には幸福が訪れ、
> やがてフィーゼ諸国王となりました。
この話は、
「じゃあ、もしも同じ状況で、助けない選択をしたらどうなっちゃうんだ?」
という裏の意味も持っているのですね。
ここだけ見ると昔話でよくある「正直じいさん、欲張りじいさん」みたいなもので、
世俗的な道徳を説きつつ、
結局、その方が自分にとって得になるから、そっちを選ぶ、
というような利己的・即物的な解釈に陥りがちなところのようにも思います。
利他主義も実は利己主義なのだ、という思想的袋小路。
その点に関してクライシスルートで、
自分の損得だけを考えている限り、人生は苦しいだけの場所であり、
他者への愛が循環する世界に参入することでこそ生の喜びがあるのだ、と、
一つの脱出口が示されているのではないかと読み取りました。
それでも、上記の「袋小路」に従えば、
結局は「自分」が喜びを感じられるからそうしているに過ぎない、というロジックになりますが、
ここまで来ると既にそういう自他の壁というものは意味を持たなくなっている。
また、リリアトス側から見ると、
恵みを受けた結果の自分の世俗的な成功だけに目を奪われたのでは、
形式的に身分を縛るだけの「呪い」になってしまう、というような含意が読み取れるようにも思います。
「望めばなんだって手に入る」けれど「本当の愛だけは手に入れられなかった」
なぜなら「手に入る」ことは本質ではないから。
それと、例の「出現フラグ」に関してですが、
ミスコンという「自分の美を他人と競い合う行為」とは無関係の選択をする、
というところにも意味が込められているのではないか……とは少々深読みしすぎかな?
このあたりに関しては個人的には他にも語りたいことは色々あるのですが、
それを書き出すと「フィーゼ島のアリア」というゲームの感想、という枠を大幅に超えて、
読み終わるのに60時間の超大作になってしまうので、控えておくこととします。
(あまり私の解釈で「汚す」のも失礼ですね)
・就職系エンド各種
正統派の数値いじりSLGですね。
これに関しては上記攻略ページ内の「条件リスト」のお世話になりました。
(条件自体を自力で手探りできる自信はなく……)
本来は、自然にプレイして辿り着いた結末が自分にとってのトゥルーエンドなのであって、
無理してコンプを目指すものではないのかも、とも思いつつ、
手段を選ばずコンプを目指すのも一つの楽しみ方ではあるだろうと宇宙から声を受信したので、
声に従って頑張りました。
プレイ内容としては、
条件を見て、それを満たすように、いかにパラメータを調整していくか?
というものに。
ゲーム内のイベントを全体に渡って把握することが必須ですね。
その上で、いかにそれらを踏んでいくか、避けていくか。
条件が重なった場合、「優先度」で判定され、条件を満たした中で優先度が高い方のエンドになる。
一つのバイトを続けるだけで到達するエンドは簡単に網羅できますが、
そうしたエンドは「優先度」が高く設定されているのが罠ですね。
パラメータ上昇のためにバイトをやりすぎると、
そのバイトのエンドになってしまい、狙ったエンドにならない場合がある。
最難関と思われる「23:桜の精に愛された伝説の少女」が実は結構簡単で、
「優先1位」なので、他のエンド条件との重複を気にする必要がない。
踏めるイベントを踏みまくって全パラメータを遠慮なく上げれば達成できました。
他のエンドは、その手順を前提に、いかに引き算していくか? というパズルでした。
「この条件を達成するには……あのイベントを踏んで、あれを買って……」
などと手順を考えるのが楽しかったです。
ミスコンを極めると資金繰りの目処が立つので、
それを中心に手順を組み立てるのが一つのセオリーでしたね。
ストーリー的には「愛人エンド」でちょっと笑いました。
(おじいちゃんに伝えなきゃ!)
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■ まとめ
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さて、あれこれと小賢しいことを書いてしまいましたが、
乙女ゲーとして素直に楽しむことこそがこのゲームに込められた願いなのかもしれません。
「乙女向けまったり育成シミュレーション(by readme)」なので、
本来は私向けではないのかも、などと思いつつ、
ツイッターで偶然見かけて何となくプレイを始めた本作ですが、
プレイすることができて良かったと思います。
(これも桜の精霊の導き……?!)
素敵なゲームをありがとうございました!
では最後にもう一度、ダウンロードページへのリンクを載せておきます。
ぜひあなたもフィーゼ島を訪れてみてください。
全て〜の〜人たちに〜奇跡ーのーアーリーアー
[配布サイト]
https://www.freem.ne.jp/win/game/2841
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