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◆◆ 思ったこと: ◆◆

        騒音主は「強い」
        
        
        まずは「極端な事例」から紹介します。
        
        参考:
        http://www.30hikikomori.com/2016/12/blog-post_29.html
        
        概略としては、こうです。
        「きちがい兄貴」が家の中でヘビメタを鳴らしまくっていた。
        しかし「きちがい親父」はまったく注意せず、騒音は収まらなかった。
        明らかな騒音なのに、なぜ家族はそれを放置していたのか?
        
        引用:
        > きちがい親父はきちがい親父の中の理由というのがある。
        > ヘビメタ騒音を注意しなかったのは、(もうその時点では)兄貴がこわかったからだ。
        > 是が非でも、兄貴に注意をするのは嫌なのである。
        > で、そういうことを認めてないから、「そんなん、なっちゃったらなっちゃってしかたがない」とか
        > 「ちょっとぐらいしかたがない」とかアホなことを言って、注意しない。
        
        
        つまり、「きちがい兄貴」が成長して体が大きくなって怖くなったから、注意することができなかった。
        それが真相なのに、その事実は自我には上らず、「なっちゃったらなっちゃったで仕方ない」などと言って誤魔化す。
        私はこの件に関しては部外者ではありますが、なるほど、と言わざるを得ません。
        
        そして、この事例の中には「騒音問題」というもの全般に通じる要素が顕著に存在しているように思います。
        もちろん、この事例そのもの、は極端で特殊なものであることは否定できませんが、
        かと言って「私たちにとって無関係」では決してない。
        
        
        > 「なっちゃったらなっちゃったで仕方ない」
        
        この「仕方ない」の用法が、世間一般における「騒音擁護者」のいう「だって仕方ないだろ」
        という言説と非常に似ている、というよりも同じなのではないか、という気がします。
        
        そして「注意できない」本当の理由は「力関係」である、という点。
        
        常々思っていたことなのですが、騒音問題は「力関係」の問題なのではないか?
        
        「力関係」の形は様々です。
        上記の引用例では「体の大きさ」です。
        防災無線のような官製騒音では「お上の権力」です。
        火の用心やボイスアラームといった「余計なお世話」系の騒音の場合は
        「世間の目や常識」が「逆らえない力」として苦情を抑圧します。
        
        「我慢する」「受け入れる」などと言った道徳的な言葉で「結論」を出されがちですが、
        実際はそんなキレイ事ではない。
        「力関係」で現状が固定されている。
        
        騒音の「擁護者」との会話の成立しなさ、を思い出す。
        単に騒音主の「力が怖い」から黙って従っているに過ぎないものを道徳的な言葉で塗り固めているから、
        一方で苦情を言い続ける人間のことをヒステリックに排除せざるを得なくなるのではないか?
        
        
        キレイ事を言わず、「力関係」であることを認める必要があるのではないか?
        いつまでたっても世の中の騒音問題が前進しない。
        その現状を打破する鍵の一端がそこにあるような気がします。
        
        ではさて、事実として認めてみましょう。
        騒音主ってのは、「強い」んですよ。
        
        ちょっと権力云々といったややこしい「力」は抜きにして、
        ごく単純素朴な「騒音主」を想像してみてください。
        
        あなたの近くに大音量でヘビメタを鳴らしまくる人間がいるとします。
        いくら「やめてくれ」と言ってもやめてくれない。
        
        それもそうです。
        
        だって結局のところ、鳴らすのを「やめるかどうか」を最終的に決定するのは、騒音主本人なのです。
        どれだけ「鳴らさないでくれ」「鳴らされると困る」「鳴らすのは悪いことだからやめるべきだ」
        と言っても、音を出している本人が「鳴らすのをやめる」という意志決定をしない限り音は止まらない。
        
        仮に言葉の上の論理でそれを認めさせたとしても、
        音を出している本人が、本人の手や指を使って、本人の所有物であるスピーカーなり楽器なりを「止める」
        ということをしない限り、音は鳴り止まない。
        
        さもなくば殺すしかない。
        殺すまではいかなくても、何か物理的な手段で「実力行使」する以外にない。
        
        つまり「暴力」です。
        
        そういう最終手段に訴えるしか選択肢がない。
        だけどそれはもちろん悪いことだから、実行するわけにはいかない。
        
        だからやっぱり「音を鳴らさないでくれ」と「お願い」して、本人の意志で止めてもらう以外にない。
        本人の意志は本人以外の誰のものでもない。他人を操ることはできない。
        つまり、
        
        騒音主は強い
        
        のです。
        
        想像してみてください。
        ある日突然、あなたの隣に騒音主が引っ越してきて、毎日毎日騒音を発するようになってしまった。
        何を言っても止めてくれない。
        何を言っても、です。
        
        そういう経験をしたことがない人は、
        「誠意を込めてお願いすればわかってくれる」とか何とか甘っチョロイことを思ってるかもしませんが、
        そんなのは、もう、本当に、「甘い」としか言いようがありません。
        もちろん、わかってくれる人もいますよ?
        だから、いきなり怒鳴り込むのではなく、まずは低姿勢でお願いすることを私はおすすめします。
        実際、それでわかってくれる人もいる。
        そういう人はそもそも「騒音主」じゃないんです。
        言っても通じないから「騒音主」なんです。
        
        あ、もしかして「そんなにしつこいなら警察でも呼べば?」とか思いました?
        それも甘いですね。大甘です。そんな甘いことばっかり口にしてたら生活習慣病になりますよ。
        警察を呼んでもタイミングよく来てくれるとは限りません。
        それに騒音そのもので犯罪者として現行犯逮捕されるということはないはずです。
        法律的なことはちょっとよくわからないのですが、確かそのはずです。
        運がよくて、せいぜい、ちょっと注意してくれるだけです。
        
        でも、警察を何度も呼んで注意してもらえば、じゃあそれで静かになるんでしょ? って思った? 
        あーあ、甘い甘い。胸焼けを通り越して全身大火傷しそうです。ギャー!
        さすがに警察に注意されれば一時的には静かになるかもしれません。
        でも、すぐに元に戻ります。
        いいですか? もう一度言いますよ?
        すぐに元に戻ります。
        私の言ってる意味、わかります?
        文字通りの意味です。
        元に戻る、んです。
        すぐにまた、音を出し始めるんです。
        私はただ、単純なことを言ってるだけなんですが、
        このへんで私の話について来れなくなっている人が一定数いらっしゃるような気がします。
        もう一度言いますよ?
        一度注意されて、音を止めたけれど、少し時間が経つと、また音を出し始める。
        はい。言葉通りの意味です。タネも仕掛けもありません。
        
        それが騒音主というものなのです。
        
        一回注意されて静かにしたんだったら、
        音を出すのが悪いことだということを理解した、ということのはずです。
        でも、少し時間が経つと、また音を出し始めるんです。
        そんなわけないだろ、って思いました? そりゃあ思いますよね。あなたは正常です。
        でも、騒音主という生き物は、正常なあなたとは違うんです。
        
        それが騒音主というものなのです。
        
        
        
        どうでしょう?
        「騒音主は強い」ということの意味をわかってもらえたでしょうか?
        
        精神的に強いとかそういうご立派な意味じゃなくてですね、
        「どうしょうもない」という意味です。
        殺すしかない。
        つまり「ものすごく強い」ということです。
        
        これって怖いことだと思いませんか?
        私は思います。
        
        本人が「音を出すのをやめない」という意志でいる限り、殺す以外に音を止める方法は存在しないんです。
        「殺す」じゃなくてもいいですが、ともかく何か暴力的な手段、という意味です。
        でも暴力は悪いことだから実行できない。
        つまり、音は鳴り止まない。
        
        怖い。ものすごく怖い。
        
        あなたがどんなにいい人でも、
        「そういう騒音主がある日突然隣に引っ越してくる可能性」
        から逃げることはできません。
        それはあなたの意志とは関係のないことだからです。
        他人を操ることはできない。
        
        「じゃあ仕方ないじゃん」と言う声が聞こえてきそうです。
        その通り、「仕方ない」と言えばそうです。
        
        問題はその「仕方ない」という事実に、どう向き合うか? です。
        
        
        > この「仕方ない」の用法が、世間一般における「騒音擁護者」のいう「だって仕方ないだろ」
        > という言説と非常に似ている、というよりも同じなのではないか、という気がします。
        
        これは「怖いものから逃げようとする態度」なのではないか?
        
        騒音を擁護する言説って、必ず「道徳的」なんですよ。
        「我慢してあげよう」とか「誰だって同じ」とか「わがままを言うな」とか。
        「道徳的」で、同時に「攻撃的」なんですよ。
        騒音の被害を訴えている人に対して攻撃的なんですよ。
        
        騒音主という「強者」と、被害者という「弱者」がいる。
        騒音を擁護する態度は「強者」に媚びる態度です。スネ夫です。
        
        
        確かに騒音主は「強い」です。
        しかし、それは不当なことです。
        事実上「仕方ない」かもしれないけれど
        でも、不当なことなんです。
        いくら仕方なかろうが、不当なものは不当です。それだけは変わらない。
        
        どうにもならない強くて恐ろしいものの存在を認識しつつ、
        同時に、
        不当なことを「不当である」と隠さずに言う勇気が必要です。
        
        世の中に存在する騒音全てについて、
        「それは不当なことである」と言わねばならない。言える人間であらねばならない。
        
        これは何も、いちいち突っかかっていくとか、苦情の電話をかけまくるとか、
        そういうことではなくて、態度として、ということです。
        
        なにしろ相手は「最強」ですから、無闇に戦いを挑んでもこちらが傷つくばかりです。
        戦いの挑み方、というテクニカルな面については、慎重になるべきでしょう。
        しかし不当であることに何の変わりもありませんので、
        その心を曲げてはいけない。
        その心を曲げると、他の被害者に「だって仕方ないだろ! 誰だって同じなんだ!」とかなんとか言うような人間になってしまう。
        被害者に二次被害を与える加害者になってしまう。
        そんなことではこの世に生まれてきた意味がない。
        
        
        > 問題はその「仕方ない」という事実に、どう向き合うか? です。
        
        「仕方ない」ええ、そうですね。
        だからと言って、自分が悪い人間になる必要はどこにもないじゃないですか。
        苦しんでいる人に鞭打つような人間になる必要はどこにもないじゃないですか。
        
        
        
        私は騒音被害者の味方です!
        
        
        ▽ こちらも読んで欲しい:騒音被害者応援テキスト集です
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