ベーシックインカムに反対するために必要なもの
ベーシックインカムに「反対するために」は何が必要でしょうか?
反対する人間の心の中に、ということです。
だってですよ、ベーシックインカムって、いいですよね?
労働しなくてもお金がもらえるんですよ? 最高じゃないですか!
こんなの、賛成するしかありません。イヤッフーーー!!!!
つまり、純真な心では反対することができない。
ベーシックインカムなんて賛成するっきゃない。
しかし世間には反対する人が多い。
何か、特殊な事情があるに違いないんです。
反対するということは、反対しなければならない特別な理由を知っているに違いないんです。
そうした何らかの事情なり理由なりを、反対する人たちはしっかりと理解している。
つまり、反対する人は、「理解力がある」んです。
一方、賛成している人たちだって、決して、
上で書いたような「イヤッフーーーー!!!!」なノリで賛成しているというわけではないはずです。
反対派の言い分を理解した上で、それでもなお、賛成の考えを持っている。そのはずです。
話を整理しましょう。
・レベル0:
労働しなくてもお金がもらえるぜ! イヤッフーーーー!!!!
・レベル1:
やっぱ労働しなきゃダメでしょ。
・レベル2:
いえいえ、ベーシックインカムは可能だし、いいことたくさんあります。
現状では、レベル1が「常識」ということですね。
で、レベル1の人にとっては、レベル2とレベル0の見分けがつかない。
「労働しなくてもお金がもらえる社会を!」とかなんとか世迷い言を言ってる連中は全員レベル0だ! スライム狩って出直してこい!
と、こう思っている。
ここに、話のすれ違いがあるわけです。
レベル1の良識ある人々は どうのつるぎ を振り回して「うははは! おいらレベルアップしてるし、スライムなど楽勝ぉぉ!」
と頑張ってて、でも実はメダパニをかけられてて、
てつのよろい や くさりかたびら を装備したお兄さんたちに1ポイントのダメージを与え続けている。
ダメージはしょせん1ポイントですが、いかんせんレベル1の人々の数が多い。桁違いに多い。しかも次々に仲間を呼んで増える。
レベル2のお兄さんたちのターンが全然回ってこない。地味にHPを削られる。
さて、レベル1の良識ある人々がスライムやレベル0の腐れ外道だけを的確に選んで根性を叩き直しているなら、
それはそれで必ずしも悪いことではないかもしれないのですが、
残念なことに、レベル1の良識ある人々は、レベル0とレベル2の見分けがつかないのでした。
レベル2の人だって本当は仲間なのに、敵だと思い込んで、どうのつるぎアタックをしてしまう。メダパニがかかってる。
それで、"あなたメダパニかけられてますよ" と指摘するのは、それはそれで正しいことなのですけど、
そう指摘したとしても、メダパニは解除されない。
呪いがかかっているとも言えます。
ところでレベル1の良識ある人々といえども、かつてはレベル0の腐れ外道だった時代がある。
地道にスライムを狩って、レベル0からレベル1にアップしたのです。
それは努力のたまものなんです。サクセスストーリーの体現者なんです。
もちろんその上にはレベル2があり3があり、いくらでも上があるのですけれども、
しかし少なくとも0ではない。頑張ってレベルアップしたんですよ。0とは違うのですよ。0とは。
だから、そこは認めてあげるといいのかもしれません。頭なでなでしてあげるといいのかもしれません。
ベーシックインカムに反対するレベル1のみなさんは、レベル0よりもレベルが上であるからこそ反対している。
レベル2以上の私やあなたから見れば、連中はレベルがまだ1だから反対してしまっている、未熟者め、と言いたいところですが、
しかし、そこは敢えて、成長を見守る視点で見てあげましょう。
レベル1のあの子にとっては、ベーシックインカムに反対することはレベル0ではないことの証(あかし)なんです。
「あたち、レベル0じゃないのよ! レベルアップしてるんだからねっ! 子供扱いちないでよねっ!」という誇り高き態度表明なんです。
さて、レベル1のあの子はレベル0から1になることで、何を獲得したのでしょうか?
ひとつは、現在の世の中はレベル1の考え方が主流になっていて、
その考えに従わなければ生存できない、という事実です。それを学習した。
もうひとつは、その考え方の根拠となっているこの世の摂理。
と言ってもそれは一昔前の摂理ですが、人類の生産性が今よりも低かった時代、人類は確かに、労働をしなければ生存できなかった……、
と、言いたいところですが、これって本当ですかね?
「本当ですかね?」と言ったのは2通りの意味で、です。
一つは、昔は人類の生産性が低くて労働が必要だった、という "昔" のイメージ。ステレオタイプ的な。
むしろ今みたいに通勤時間含めて毎日何時間も拘束されないと生存できない、なんて時代は、
人類の歴史が始まって以来、わりと最近の傾向なんじゃないでしょうか?
しかも必要だからそうしているというより、社会のルールという人工的な理由でそうしているという奇妙さ。
いや、しかしこれを言い出すとレベルが上がってしまうので、今は追求しないことにします。
もうひとつの「本当ですかね?」の意味は、
レベル1の人は本当にそれを学んだのか? という意味です。
こうした "昔" の漠然としたイメージは、レベル1の考え方の根拠を語るための "神話" なのであって、
レベル1の人が、本当に、自分自身の実感として、その通りだ、と腹の底から思い知った、というわけではないような気がするのです。
そういうわかり方なのではなく、まわりがそのように言っているようなので、自分もそう思うことにした、ということではないでしょうか?
つまり、結局のところ、これも一つ目に述べた学習事項の一部ということです。
現在はレベル1の考え方が主流になっていて、それに従わなければ生存が許されない、ということになっている。
そのことを、こうした "神話" も含めて学習した。そういうことではないでしょうか?
つまり何が言いたいかと言うと、
レベル1の人はレベル0ではない、ということです。
経験値をためてるんです。ホイミを使えるようになったんです。エライじゃないですか。
しかし残念なことに、ゲームの目的を見失ってると思うのですよ。
レベル0から1にアップするには、労働の必要性を受け入れる必要があったのかもしれませんが、
しかし労働すること自体がこのゲームの目的だったでしょうか?
労働やお金というのは生存の手段なのであって、生きていることの目的ではないはず。
ではさて、本当の目的は一体何なのかというと、それはちょっとレベル2や3では答えられないところのようです。
しかしこの、本当の目的を探る、というのは、
大部分のプレイヤーにとって共通の課題ではないでしょうか?
少なくとも我々レベル1桁台のプレイヤーにとってはそのはずです。
それで結局労働が目的でした、というオチが待っていないとも言いきれないのかもしれませんが、
それならそれで、レベルが上がって冒険を進めた上で、そのように気付けばいいことなのであって、
レベル1の段階で、わけもわからずにその場にとどまっているだけ、というのでは、
本来踏むべき手順を踏んでいないというか、一種のチートです。レベル1のキミ、怠けるの嫌いでしょ? キミのそれ、チートだけどいいの?
しかもそれがトゥルーエンドになってるならまだしも、そこのところが、はなはだ怪しい。
やっぱ、ちゃんと手順を踏もうではありませんか。
と、言ったとしても、レベル1の人の心に届く気がしません。
むしろレベル1とか言ってバカにしてしまってますからね。ごめんなさい。
いや、バカにしてるというか、もともとそのつもりではなかったはずなのですよ。
レベル0からはアップしてるんじゃん? ということで考えてみた。
しかしやっぱり、しょせんは通過点なのであって、そのままではよろしくないですよね、と思うのです。
タイトルを改めます。
"レベル1を脱して冒険を先へ進めるために必要なこと"
次の2つが必要です。
・レベル1で獲得したことの価値について問い直すこと
・人生の目的について考えること
レベル1で何を獲得したかと言うと "労働の必要性" という呪文を獲得した。
でも、本当にそれでいいの? ってことです。本当の本当の本当にそれでいいの? ってことです。
そもそもゲームというか人生の目的は何だったのか?
答えの出ない問いに取り組む精神力が必要です。
あるいはそうした取り組みを支持する文化が必要です。
なんだかね、今の時代って、そういうことって、「大の大人が大真面目に考えるようなことじゃない」ってことになってるような風潮がありません?
その風潮が、あんまりよくないことなんです。多分。
いえ、こういうのって、一人一人の心の中で密やかに考えればいいことだと思うのですが、
それを可能とするためにも、労働が強制されている現状は不都合です。おちおち考え事もできやしない。
などと言うと考え事ができないのを人のせいにするな、この未熟者がぁ、
とかなんとか、レベル1のベテラン戦士の先生から熟練度99のメラをくらってしまいそうですが、
うん、そうなんですよね。なぜか戦士が魔法を使う。じゃなくて、なぜか、攻撃の対象になってしまうんですよね。
別に攻撃しなくてもいいじゃん、敵対しなくてもいいじゃん、って思うのですが、
なんでか、レベル1の勇者諸君は常に攻撃の対象を探しているようなイメージが、私にはあります。
自分がレベル0を卒業してレベル1になっていることを常に証明し続けるために、
レベル1以外のものを全てレベル0とみなして自分の強さ(レベル1になって獲得したもの)を披露し続けている。そんな印象が私にはあります。
敵対しなくてもいいんですよ。協力し合いましょうよ。
なるほど。ベーシックインカムってそういう側面もありますよね。協力しあって生きていきましょうということです。
とにもかくにも賃労働に明け暮れないと生存できないというのでは、それもままならない。
いわく「俺は仕事が忙しいんだ!」という呪文です。レベル1と言いつつ、結構たくさん呪文覚えてるみたいですね。
ああ、話が長くなってしまう。
まとめます。
レベル0:純真な心。(労働しなくてもお金もらえる? 最高じゃん! イヤッフー!!)
レベル1:いわゆるベーシックインカム反対派
レベル2:いわゆるベーシックインカム賛成派
賛成派の人はレベル0ではない。
反対派の人もレベル0ではない。
しかし反対派の人は賛成派の人のことを、どうせレベル0なんだろ? と思って見下している。
ここが、話のすれ違いのもとになっているみたいだぞ、という話でした。
この世の全ての人が生存の不安から解放されますように。
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