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◆◆ 思ったこと: ◆◆

        ビットコインは「裸の王様」ではないですか……? 違いますか、そうですか……。
        
        ビットコイン以外にもいろいろありますが、
        この手の電子的な暗号通貨は絶対に無理があると思う。
        
        試しに少しだけ手を出してみたことがあるのですが……、
        重いですよね。速度も。容量も。マイナーなコインであっても重い。いわんやビットコインときたら……。
        私のやり方や理解に問題があるのかな、とも思ったのですが、どうも、「そういうもの」らしい。
        
        なにしろ、「すべての取引を記録している」のですから、容量は大きくなって当然です。
        大金を持ってる人だけ重いのではなく、残高0でも大容量。しかもウォレットを起動するたびに「同期」とやらで待たされる。
        「同期」というのは、つまり、取引の記録をダウンロードしているということのようです。これが終わらないと使える状態にならない。
        自分の取引だけじゃなくて、ネット上の利用者全員の取引の全累積らしい。マジですか? どうやらマジらしい。
        インストール直後だけ時間がかかるのかと思ったら、起動のたびに待たされる。やってらんない。
        つまり、自分が使ってない間にもネット上では他の人が取引をしているから、それを全部ダウンロードしなきゃいけない。やってらんない。
        起動しっぱなしにしとけって前提なのかな? パソコンの電源切れないじゃないですか。やってらんない。
        
        で、私は早々に手を引いたのですが、それ以降も容量は肥大化の一途を辿っているそうで、
        今ではビットコインのウォレットをインストールすると、HDDが60GBほども占有されるのだとか。
        当然、「同期」のダウンロード時間も長くなっていることでしょう。
        これ、利用者が少ない初期のうちは軽かったのかもしれませんが、
        いずれ必ずこうなるってことは、最初っからわかってたことなんじゃないんでしょうか?
        
        ビットコインに限らず、この手の暗号通貨について調べていると、
        「技術的には課題はあるけれど」といった話はいろいろと出てきます。課題を乗り越えつつ発展・普及させていこう、と。
        が、容量が肥大化する一方、という件に関して正面から取り沙汰している話、あんまり見たことがないです。
        なので、やっぱり私が、暗号通貨の仕組みについて勘違いしているだけなのかな? と心配になってしまうのですけど、
        どうなんでしょう? 多分ですけど、やっぱりこれって、「そういうもの」なんじゃないんでしょうか?
        私のような「素人」には信じがたいことなのですけど、「そういうもの」なんだと思うのです。
        
        すべての取引を記録している。
        だからデータは日に日に肥大化する一方。
        
        なぜそんな(無駄っぽい)ことをする必要があるのか?
        私の理解ではこうです。
        こうした暗号通貨は円やドルなどの従来の通貨と違って中央の管理機関を持っていない。
        そして電子データなのであり、ゴールドのような物質的な裏付けはない(コピーが可能)。
        ではどうやって価値の信用を確保するか?
        「誰が」「誰に」「いくら送金したか」というネットワーク上の全取引を記録しておく。
        さらにその取引記録をネットワーク上の全クライアントで共有し、互いに監視し合う(→ だからウォレットが重くなる)。
        こうすることで「中央の管理機関なしに」「価値の信用を確保」することが可能になる。理屈の上では。
        
        中央に銀行や国家のような管理機関が存在するのであれば、そんな(無駄っぽい)ことをする必要はない。
        データは中央にだけあればいい。個々の利用者が同じものを持っている必要はない。
        過去の取引を逐一全て記録しておかなくても、IDごとの残高さえ記録しておけば事足りる。
        それが正しいかどうか? 改竄されていないかどうか? 常にそうした疑惑はつきまといます。
        だからこそ、通貨というのは「信用」そのもの、なのでした。
        たとえば国家や銀行といった存在を信用すること=その通貨の価値を信用すること、なのでした。
        (お札にはエライ人の肖像が描かれてますよね。信用しようぜ、ってことですね)
        
        そしてもちろん、信用はリスクの裏返しです。
        果たして国家や銀行は信用に足りる存在なのか? 私たちを騙しているのではないのか? 諭吉ファンじゃない人はどうすればいいのか?
        そこに「中央を持たない」こうした暗号通貨の存在価値があります。
        
        ではさて、実際のところ、そういう通貨をどうやって実現しましょうか?
        
        頭のいい人
        「全取引を記録して全員で共有すればいいじゃん」
        
        調子のいい人
        「わーお。ナイスアイディア! やっちゃおう!」
        
        素人
        「……(あんたら正気?)」

        
        なんていうのかな。
        理系的なゴリ押し、とでも言うような発想がある気がする。
        理系とか文系とかいう言葉で大雑把に人間を分類するのはあまり好きではないのですが、
        ここは揶揄する意図を込めていますので、あえて言いました。
        
        理系的なゴリ押し。
        
        そういうのって、他にもいろいろありますよね?
        たとえば、コンピューターが発達しまくれば、人間の脳と同じものが作れる、とか。
        テレビの部品をバケツに放り込んで10億年かき回し続ければテレビが完成する、とか。

        そういう、単純なロジックを非常識なまでに押し広げる非現実的な発想のことです。

        暗号通貨の「ブロックチェーンで全トランザクションを記録する」というのも、同じようなニオイがします。
        「常識的」に考えると、むちゃくちゃな話です。

        理屈の上では、それで通貨のようなデータが作れる。
        そりゃあ理屈の上ではそうかもしれませんが、そんなことを大真面目に考えるのは理系サイコ野郎だけです。
        仮に日本円とかドルなどのお馴染みの通貨の世の中での毎日の取引をすべて記録しようとしたら、大変なことですよね?
        どんなパソコンだって一瞬でパンクするでしょう。
        
        でも、「理屈の上ではそれで通貨みたいなデータが電子的に作れちゃうよね?」という。
        で、実際に作っちゃった、と。
        ただし、HDDの容量や処理速度や電気代などといった「現実的な要因」は見事に捨象されてるわけです。
        かつてのチューリングマシンも同じですね。理屈の上では成立してるけど、そんなもの誰も作れない。
        ところがビットコインは作れてしまった。幸か不幸か。
        
        ……という話をエラそうにしてしまうと、やっぱり私が勘違いしてるだけなのかな? と心配になってしまうんですが、
        多分、そこが、マジックの潜みどころでもあると思うのですよ。
        「理系的なケレン味(迫力)」に圧倒されてしまう。
        圧倒されて、現実的な要因を指摘する気力を失ってしまう。
        「王様は裸だ!」と言えなくなってしまう。
        
        でも多分、王様はやっぱり裸なのではないでしょうか? 私はそう思います。
        
        ただ、もともとは、いつまでも裸のままでどこまでもストリーキングするつもりだったわけではない、のかもしれません。
        一時的な実験に過ぎなかったのかもしれません。
        現在のように、少なからぬ人々が「真に受けて」通貨としてまともに使うようになる、などということは想定していなかったのかもしれない。
        恒久的に使えるようなシロモノじゃないですもんね。流行りの言葉で言えば「持続可能」じゃない。
        ああ、でも、「容量の肥大化よりもHDD自体の容量が増える速度の方が早い」とか言い出しそう。まさに「理系的ゴリ押し」だ。
        あるいは何か別の目的があったのかもしれない。
        一時的に社会に衝撃を与える、とかなんとか。
        
        しかし、思想的には捨てがたいとは思うのですよ。
        中央の発行機関を持たない、というところ。
        それをどう実装するか? という技術的な話はさておき。
        
        そういう意味では、こうした「通貨」には可能性を感じるし(容量の肥大化の問題を乗り越えて)存続して欲しい気はします。
        どうなんでしょうね?
        最初の方にも書きましたが、「技術的な課題」として取り沙汰される中に、容量の肥大化問題は含まれているのでしょうか?
        いまいち含まれてない気がして心配というか、心配というよりも「怪しさ」を感じる。
        
        私が見た限りでは「技術的な課題」として取り沙汰されているのは大体、セキュリティやインフラが主で、
        その他は法律的な位置づけに関する議論が多いようです。
        
        容量が増えるだなんて、素人にもわかるというか、
        だからこそ、あまりにも素人くさすぎて言いにくいというか、
        つまり「王様って裸……じゃね?」と内心では思いつつ、口をつぐんでしまう、
        ということなんじゃないのでしょうか? どうでしょう?
        
        「暗号通貨すごいぞ! 未来の通貨だぞ!」と騒いでいる人は大勢いるのに、素人でもわかるような問題点が無視されてる。
        だから、本気で通貨として恒久的に使っていくつもりがあるようには見えないのですよ。何か企んでるんじゃないのか?
        最終的にはデータがクソ重くなって、到底実用に耐えなくなり、ほとんどの人が見放す。
        最後までしがみついている人が損をする。クソ重いけど、莫大な残高があるから、手放せない。
        いくら莫大でも、すでにほとんどの人が通貨として使わなくなっているので、価値はゼロに等しい。祭りは終わった。
        そうなるまでの「から騒ぎ」を利用して、誰かが何かを企んでいるのではないか?
        国家や銀行とは違う意味で怪しい。
        
        え? 何ですって? オンラインのウォレットを使えばいいって?
        なるほど。オンラインのウォレットを使えば自分のパソコンが重くなるのは避けることができますね。
        しかしそれって、いわば、ゴミをゴミ捨て場に持って行っているだけなんじゃないんですか? そのうち埋め立て場が満杯になる。
        データが肥大化するということに変わりはない。いずれ破綻するのではないのですか?
        
        しかも「中央がないからいい」というのが思想的なメリットだったはずなのに、
        データの肥大化につき個人では扱えなくなって、業者に頼らなきゃならなくなるだなんて、騙されてる気がする。
        最初っからそういう筋書きだった、というのは疑い過ぎでしょうか?
        
        データの肥大化という観点で、構造的に寿命が運命づけられている、と考えることはできないでしょうか?

        1,データは軽く、個人でも扱える時期
        2,データが重くなってきて、個人では扱えない時期
        3,データがさらに重くなり、誰にも扱えなくなる時期
        
        現在は 1から2に移行しつつある段階でしょう。個人でも扱えないこともないけど、キツくなってきている時期。
        やがて個人では到底扱えなくなり、業者に頼らざるを得なくなる。
        この時点ですでに初期の頃に夢見ていたような自由さは失われている。
        
        2の段階の後期ではごく一部の世界的な大企業だけが独占している状態になる。
        実質的に国家などの中央の機関が管理している状態と大して違わなくなっている。
        こうなるともう、「P2Pで互いに監視し合う暗号データ」ということが容量を肥大化させる足枷でしかない。
        
        「どうせ一社で管理してるんだし、そんな制約取っ払ってしまえば?」 みたいなことを誰かが言い始める。
        実際、ネットワークに参加しているマシンの絶対数が減っているので、P2Pでの相互監視というシステムが有名無実になっている。

        通貨の利用者は増えているかもしれませんが、オンラインでアドレスを借りているだけの人ばかりであり、
        自分のマシンにウォレットをインストールしてP2Pネットワークに参加している人は皆無です。
        だってこの段階では、個人で所有できるマシンではウォレットを稼働させられなくなってますからね。

        すると大変まずいことが発生します。
        
        その大企業の管理下にあるマシンだけでネットワークの多数派を占めてしまっており、いわゆる「51%攻撃」がやりたい放題!
        つまり、一社で管理しているのと同じ状態ということです。
        結局その企業を「信用」することでしかその通貨の「信用」も成立しえない。通常の通貨と何ら変わらない。
        
        やがて 3の段階へ移行し、通貨そのものが破棄される。残高を溜め込んでいた人だけが損をする。
        と、なるだけならマシですが、2の後期からの流れがありますから、
        通貨は国家ではなく世界的な大企業が管理するもの、という風潮およびシステムが確立してしまっている。
        P2Pでの相互監視という「制約」を取っ払った「通貨」が大企業の独占の下で世界を支配してしまう。
        
        いわゆる「新自由主義」のおそるべき勝利です。
        つまり暗号通貨とは、ななな、なんと! グローバル資本が通貨の管理権を国家から奪い取るための戦略兵器だったのだ!
        
        ……というのは少々妄想っぽい気もしないではないですが、
        つまり、それぐらい、現状のいわゆる暗号通貨というやつは、怪しい、ということです。
        「まともに使えるわけがない」ということです。
        
        繰り返しますが、中央の発行機関を持たない、という思想面は捨てがたいと思っています。
        ネットで手軽に送受信できるというのもよいですね。銀行振込よりも便利です。理屈の上では。
        その点で、こうした電子的な通貨には可能性を感じています。バカにする意図でこれを書いたのではありません。
        正直言って私も使いたい。だけど重いのィヤなんだよぉ。コンチクショー。校舎の窓ガラス割るぞぉコラぁ。
        
        もちろん私の理解が間違っていて、「実はデータは肥大化なんてしないんですよ? ここをこうすれば……ホラね!」
        というのであれば、まさに望むところです。バカにするのが目的ではないんです。
        裸の王様に服を着せてあげたい。石を投げつけるのではなく。嘘を言ってごまかすのでもなく。
        
        
        
        いや、ところで、しかし、
        
        > つまり暗号通貨とは、ななな、なんと! グローバル資本が通貨の管理権を国家から奪い取るための戦略兵器だったのだ!
        
        これは、ちょっと怖いなぁ。どうしよう。
        適当に書いてたらそういう展開になっただけなのですが、なきにしもあらず、という気がしてきました。
        
        実際、重いのがイヤだからってオンラインのウォレットを使うってことは、
        P2Pのネットワークに参加するマシンが減るってことですよね?
        その風潮が強まるほど、51%攻撃の現実味が増していくんじゃないんですか?
        その最後の段階で、オンラインのウォレットを提供している大企業はどこでしょうか? ってことです。
        
        だって、例えばですけど、
        某G社が検索エンジンのデータベースとして保有しているマシンが世界中に何台あるか知りませんが、
        個人レベルで太刀打ちするのは不可能ですよね?
        「たかが検索エンジン」だから「そんなに目くじら立てなくてもいいじゃん」って言ってられますが、
        同じようなことを暗号通貨のフィールドでやられたらどうなるか?
        51%攻撃なんて、上記の3の段階を待つまでもなく、やりたい放題なんじゃないですか?
        個人同士のP2Pネットワークなんて、簡単に崩壊する。
        
        いや、徐々にデータが肥大化するっていう構造的欠陥(あるいはワザと)がないならば、
        デモクラシーが維持されるのかもしれません。P2Pネットワークに一人一人が個人単位で参加し続けることができるからです。
        しかし、その状態は続かない。続かないようになっている。
        めちゃめちゃ怪しいじゃないですか!
        いずれ代議制を経て、独裁制に移行することが運命づけられている!
        
        誰か反論してください。