神を叙述することはできない。
では人間なら叙述することはできる?
本当はできない。
うっかりすると叙述は呪いになる。
だから本当はできない。
その点では人間は神と同じということでしょうか。
あるいは、人間とは、とどのつまり、神ということでしょうか。
または、叙述されてしまった神のことでしょうか。
私があなたのことを、何処其処に住んでいる誰某で、性別は何で、血液型は何で、身長はどれだけで、好きな食べ物は何で……、
と叙述することで、あなたは、そのような人間であれかし、との呪いを受ける。
あるいは自分で自分に呪いをかけることもある。
そうした呪いをかけられる以前、または呪いが解かれた以降、叙述の埒を嵌められていない生(なま)の姿は神なのではないか?
叙述を、インターフェイス、と読み替えてみる。
生のインスタンスにインターフェイスをかぶせることで、メソッドを通したアクセスが可能になる。
インターフェイスをかぶせることで型が明確になり、変数に入れて持ち回ることが可能になる。
インターフェイスを通す限り、インスタンスの実体が何であるのかを知る必要がなくなる。
あなたを叙述することで、あなたが本当はどんな存在なのかを知る必要がなくなる。
血液型で分類することができるようになる。list<身長160cm台> に格納してループさせることができるようになる。
神が人の姿をかりて地上に降りてきた。
そして私は神を知ることはない。
|