ルールを破る方が安全なのか?
たとえば地下駐輪場への出入り口のスロープ。
そこには貼紙がしてあります。
「安全のため自転車から降りて通るように」という注意書きです。
何枚も、でかでかと、無視しようがないほどハッキリと書かれています。
しかし、駐輪場へ入っていく人で、自転車から降りて坂を歩いている人を見たことがありません。
登るときは別ですが、降りるとき、まるでそうするのがルールであるかのように、
誰もが自転車に乗ったまま、坂を滑り降りていきます。
私はと言えば、いつも自転車から降りて、押して歩いて入るようにしています。
なぜかと言えば……というより、ここで理由を挙げて説明しなければならないということ自体に不可解さを感じます。
なぜ理由を挙げる必要があるかと言えば、私の方が少数派だからでしょう。
「自転車から降りて通るように」としつこいほど貼紙がしてある場所で、
その通りにしている私がほぼ唯一の例外で、
そのほかのみんなは、まるでどこか別の場所で口裏を合わせてきたかのように、自転車に乗ったまま滑り降りている。
ここでは私は圧倒的に少数派です。
私がそうしているのは……と説明するのは釈然としないのですが、
それでは話が進まないので説明しますと、
まずはそのように貼紙があること。そして、その内容が適切であると判断している、
つまり狭くて曲がっていて人の多いスロープで、自転車に乗ったまま降りていくのは危険である、
と、私自身もそのように判断しているからです。
仮に貼紙がなかったとしても、おそらく私は自転車を押して降りるでしょう。事実、危険であると感じるからです。
ましてや貼紙があって同意見のことが書かれているのだから、なおさらです。
別に貼紙に書かれているからというだけの理由で無条件に従っているわけではありません。
もし貼紙に「逆立ちして通れ」と書かれていれば、その貼紙の掲示者の意図を疑うでしょう。
そしてもちろんその指示内容には従わないでしょう。
さて「自転車から降りて通るように」の貼紙です。
もしかすると私が知らないだけで、とんでもない悪の団体が掲示している貼紙なのでしょうか?
たとえ形だけでもそれに従うことは、恐るべき巨悪に間接的に加担することを意味している。
私以外の誰もがそれを知っており、敢えて掲示内容とは逆の行動をとることで巨悪が蔓延するのを防いでいる。
それを知らず、私は1人、無邪気にも書いてある通りの行動をとって悪に加担してしまっている。
……と、実はそういうことだったりするのでしょうか?
> つまり狭くて曲がっていて人の多いスロープで、自転車に乗ったまま降りていくのは危険である、
> と、私自身もそのように判断しているからです。
実際、怖い思いをしたことは何度となくあります。
ブレーキを握りもせず、無音で勢いに乗って滑り降りてくる自転車の雨あられ。
しかもスロープは途中でカーブしているのです。
下から上へ歩いて出て行くときには身の危険を感じます。
そんな状況で、しかも、でかでかと「自転車から降りて通れ」と貼紙があるにも関わらず、
誰一人としてそのようには行動しない。
なぜなのでしょう?
自分だけは大丈夫だと思っている?
書いてあることに従うのは悪いことだと思っている?
意地になって「絶対に従うもんか!」と反抗している?
それとも、まさか、貼紙が見えていない?
見えてはいるけど、自分にだけは関係のないことだと思っている?
日本語が読めない? (そこを通る私以外の全員が? そんなバカな)
いくら考えてもわかりません。
そして、何にも増して不思議なのは、
このような状況にも関わらず、その場所で事故が起きたという話を聞いたことがない、ということです。
私は頻繁に身の危険を感じているのですが、
それは私だけ、ということでしょうか?
実は、あの貼紙と逆の行動をとる方が安全、ということなのでしょうか?
どういう カラクリ かはわかりませんが、
自転車に乗ったまま滑り降りる方が、むしろ、お互いに絶対にぶつからないような、そういう仕組みになっていて、
うかつに降りて押して歩く方が、むしろ危険であるような、
そういう仕組みに、実は、なっている?
私だけがその「安全システム」から外れてしまっている?
じゃあ、あの貼紙は一体何なのか?
やはり、せっかくの「安全システム」に水を差さんと暗躍する悪の組織による稚拙かつ執念深い妨害工作?
私だけがそれを知らずに無邪気かつ愚かにも、まんまと悪の手口に引っかかって日々恐怖に苛まれている?
意味がわかりません。
本当に本当に、
笑い話じゃなく、本当に不思議で仕方がありません。
そして、これほど典型的ではなくても、同じようなことは他にもいろいろとあります。
> ルールを破る方が安全なのか?
表向きのルールを誰も守っていない。
まるで、そうするのが「損なこと」であるとでも言うかのように、
あるいは、まるでそれに逆らうのが、むしろマナーであるとでも言うかのように、
誰もが「ルール違反」をしている。
まるでどこか私の知らない場所で口裏を合わせてきたかのように、
みんなで揃って、同じように、一糸乱れず「ルール違反」をしている。
人々は、一体、実のところ、何に従って行動しているのでしょう?
|