「お互い様」という言葉に暴力的な響きを感じます。
この言葉には、2通りの効果があるように思います。
「お互い様」だから「迷惑をかけても許されるのだ!」
「お互い様」だから「迷惑をかけられても文句を言ってはいけないのだ!」
あれ? 2通りと見せかけて、やっぱり同じことを言ってるような気もしてきました。
主語を補ってもう一度書くと、こうなるでしょうか。
「お互い様」だから「(俺は)(おまえに)迷惑をかけても許されるのだ!」
「お互い様」だから「(おまえは)(俺に)迷惑をかけられても文句を言ってはいけないのだ!」
つまり、結局のところ、
迷惑をかけている側にとって有利に作用するということです。
建前上、この言葉が象徴しているのは、次のような状況だと思うのです。
他人のために自分に不利益が生じることもあるけれど、それを受け入れて他人に便宜を図る。
一方、自分も他人に不利益を及ぼしているが、常にフォローされている。
結果、全体として、特定の個人に特定の問題の不利益が集中することがない状態が保たれている。
自分が発端となっていることで他人に不利益が及んでも、気に病む必要はない。
互いに感謝の気持ちを持って、全体が営まれていく。
ここでの典型的な会話は次のようになるでしょうか。
「いつもすみません」
「いえいえ、お互い様ですから」
つまり、自分が相手に迷惑をかけたことを謝る、という発言および態度があり、
そこへの返答として「お互い様」という言葉が出てくる。
しかるに、冒頭で述べたケースではどうか?
自分の都合だけを一方的に主張し、他者からの要望を攻撃的に拒絶する。
態度が全く正反対です。
精一杯好意的に解釈して、
「お互い様」という言葉だけが一人歩きした結果と言えるでしょうか。
上記の「建前上の状況」のような人間関係が成立している中で、はじめて、結果として、
この言葉が、この状況を象徴する言葉になっている。
互いに助け合い、互いに感謝し合う関係を象徴する言葉になっている。
そういう状況・人間関係は、ぜひとも、我々が目指す価値のあるものだと思います。
しかし、それを象徴する「お互い様」という言葉だけが一人歩きして「悪用」されてしまうのは、
とても困ったことだと思うのでです。
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