◆◆ 思ったこと: ◆◆

        伝説のゲーム『フォーンアイル』をクリアした私から地球の皆さんへのメッセージ
        
[追記 2021/10/某日] 取扱いサイトがDLSiteからSteamに変更になっていたため、リンク先を書き換えました。 本文は旧DLSite版に基づいたものとなっております。 (初出 2020/11/21)
このたび、11PLANNING様製作のオリジナルRPG『フォーンアイル』をプレイし、クリアに至りましたので、 ゲームの紹介を兼ねて感想等書くことといたします。 公式の配布ページはこちら。 ・DLsite → FAUN AIR ーフォーンアイルー ・Steam → FAUN AIR ーフォーンアイルー なお、諸事情により本記事は文章のみでお送りいたします。 『フォーンアイル』の魅力を存分にお伝えできるよう頑張って参りますので最後までお付き合いいただければ幸いです。 上記のリンク先のページで公式のSSや動画を見ることができます。 『フォーンアイル』をご存知でない方はもちろん、ご存知の方も是非あらためて今一度ご覧になり、 ゲームの雰囲気に思いを馳せつつ以下の本文をお読みいただければと思います。 ---------------------------------------------------------------------------------- ■ 「フォーンアイル」とはこんなゲームだ! ---------------------------------------------------------------------------------- >>>>> 「王道」一直線 ------------------------- オーソドックスな剣と魔法の中世風ファンタジー世界のRPGです。 プレイヤーは伝説の英雄の子孫となり、王様の命を受け、世界を脅かす魔王を討伐する旅に出ます。 この「勇者が魔王の討伐に向かう」というお馴染みの縦軸以外には ストーリーらしいものが語られることはほぼありません。 純粋に「ゲーム」として楽しむことに特化した内容です。 主人公は無言を貫くスタイル。 パーティは主人公を含めて最大で4人になりますが、仲間になる際の最低限の会話以外には、 作中でキャラ別のストーリーが語られることはありません。 あくまでも「戦闘要員 兼 アイテム欄要員」としてゲームの駒に徹する作りです。 ゲームシステムも極めてオーソドックス。「王道」からブレることのない内容です。 戦闘を繰り返して経験値を蓄積してレベルアップを図り、なぜかモンスターが落とすお金を貯めて装備を強化。 街の商店が世界を救おうとしている勇者一行からも容赦なく料金を徴収するというのも「王道」そのままです。 レベルを上げて、仲間を集め、行動範囲を広げて、最終的にラスボスを倒せばクリアという、いたって明快な内容です。 規模としては中〜長編といったところ。 すぐに終わって物足りないなどということはなく、長すぎて手に負えないということもなく、 終盤では「思えば遠くへ来たもんだ」という充実感に満たされつつ、 クリア後には偉業を成し遂げたような感慨に耽ることができます。 >>>>> シンプルな戦闘システム ------------------------------- 戦闘システムも単純明快。 フロントビューで画面中央にモンスターのグラフィックが表示され、 おなじみの「攻撃」「防御」「逃げる」「呪文」「道具」などのコマンドを選択するのみ。 大抵の戦闘は通常攻撃の連打でこなすことが可能。 攻撃系の「呪文」を使ってMPと引き換えに大技を繰り出すか、それとも通常攻撃をするか。 そこが戦闘時の駆け引きとなります。 「道具」に関しては、戦闘中に使用する可能性があるのはいわゆる薬草系の回復アイテムのみ。 これも攻撃同様、回復系の「呪文」を使ってMPと引き換えに回復するか、それとも消耗品の道具を使うか。 そこが戦闘時の駆け引きとなります。 呪文は「攻撃系」と「回復系」の二系統にハッキリ分かれており、 属性を考慮して云々かんぬんとか、ステータス異常を利用して云々かんぬん、といった複雑さは存在しません。 あくまでも「MPを消費して大きなリターンを狙うか、それとも……」という選択に純化したシステムです。 あ、言い忘れてましたが、「シンボルエンカウント方式」であることも付記しておきます。 フィールドでの自キャラの歩行速度がかなり高速であり、 その気になれば敵シンボルをスイスイかわして進むことも可能。 ちょっとアクションゲームをしているような気分になったりも。 ただし街の中でも高速歩行なのでNPCと「話す」のも一筋縄ではいかない。健闘を祈る。 >>>>> シンプルな成長システム --------------------------------- 戦闘を繰り返してレベルを上げていくというのは前述の通り。 お金を貯めて強力な装備を整えていくというのも前述の通り。 呪文はレベルが上がると自動的に習得していくシステム。 ポイントを割り振って取捨選択していくといったような複雑な内容ではありません。 戦闘をこなしてキャラクターを強化し、 最初は苦労していた敵にも、いつの間にか簡単に勝てるようになっていく。 そうしたカタルシスや充実感をシンプルに味わえる内容になっています。 呪文が「攻撃」「回復」の2系統のみというのは前述の通り。 駆け引きとしてシンプルであるのみならず、 「この呪文って何の効果だっけ……?」と覚えきれなくなってしまう心配はありません。 ちなみに習得する呪文が全キャラ共通というのも分かりやすさに拍車をかけています。 武器に関しては少々特徴があり、 装備する武器によっては [二回攻撃] や [全体攻撃] が可能になるものがあります。 と言っても、登場する装備アイテムの種類自体が必要最小限に絞られており、 ゲームの進行に合わせてその時点で手に入る最強装備を持たせておく以外の選択肢はほぼなく、 結果的にそうした特殊効果もついてくる、といった感じです。 ただ、その分、ゲーム的に存在意義が不明な「ハズレ装備アイテム」は存在しません。 常に「次はあの武器を買おう」といった目標が明確で、 装備品を1つグレードアップするたびに如実に戦闘力がアップし、強さを実感できるようになっています。 呪文と違って装備品はキャラごとに装備可能なアイテムが分かれていますので、 お金の使い道として「どのキャラを優先的に強化するか?」という成長戦略を練る要素はあります。 (おすすめは中盤で手に入る全体攻撃の「いばらの鞭」) >>>>> 街の人と「話す」で情報収集 ----------------------------------------- 基本的なゲームの流れとしては、 ・特定のエリアでダンジョンをクリアするなど、何らかの目標を満たす ・次のエリアへ移動し以下同文 という感じなのですが、時々、次に何をすればいいのか分からなくなることがあります。 が、そんなときこそ街の人に話しかけて情報収集です。 向かうべき場所や、道を切り開くヒントが得られるようになっています。 ストーリーらしいストーリーがない一方、 こういう「ロールプレイング」の原点とも言える要素が込められているのは昨今では逆に新鮮かもしれません。 >>>>> こんな人におすすめ! --------------------------------------- 以上のように、本作は徹底して実直な「王道RPG」と言える内容になっています。 野暮を承知で有名他作品に比較して言えば、路線としてはファミコンのドラクエ2に近いと感じました。 「ストーリーを読みたいわけじゃなく、  二次元キャラを愛でたいわけでもなく、  複雑怪奇なシステムを覚えてやり込みたいわけでもなく、  シンプルに王道RPGを楽しみたい」   という方にはぴったりの内容かもしれません。 さて、ここまでの説明だけでは、特徴のない平凡で単調なゲームのように思われてしまったかもしれません。 しかし、本作には特筆すべき点が多々あります。 もう一度言います。 本作には特筆すべき点が多々あります。 ---------------------------------------------------------------------------------- ■ フォーンアイルのここに驚け! ---------------------------------------------------------------------------------- >>>>> 装備品によって変化するグラフィック ---------------------------------------------- 装備用のアイテムの種類自体が限られていると言いましたが、 それを補って余りあるのがこれです。 装備しているアイテムに合わせて、小さなドット絵のキャラクターが、実際にそのアイテムを装備している絵になる! あくまで見た目が変わるだけですが、これは単純に楽しい。 冒険を始めた直後は王様から世界を救う命を受けたにもかかわらずモブキャラのような出で立ちで如何にも頼りなく、 最初に手に入る装備品も「棍棒」という「剣と魔法の世界」じゃないのかよ、とツッコミたくなるような有様ですが、 冒険を進めるにつれ、どんどん「勇者らしく」なっていく。 装備品の種類自体は絞り込まれているものの、 逆に言えば装備のグレードを1つ上げるたびに強さが如実にアップするようになっている。 そこへさらに、次はどんなグラフィックになるかな? という楽しみも加わるわけです。 昨今の3DのRPGでは装備品がキャラクターに反映されるのはむしろ当然といった趣きですし、 商用の2Dゲームでも同様のフィーチャーを備えたものは珍しくはありませんが、 個人製作のゲームでここまで細部が作り込まれているというのは驚きです。 と言うより、こう言っては失礼ながら、絵柄自体が「いわゆる絵の上手さ」を感じさせるものではないにもかかわらず、 これだけ細かく作り込まれているという点に意外性を感じるところです。 断じて手抜きなどではなく、小さな絵の中に制作者の熱意が詰め込まれているのでありました。 見た目で判断して申し訳ありませんでしたと言いたくなります。 >>>>> 細かくアニメーションが作り込まれたドット絵 -------------------------------------------------------- 装備品の件とも重なりますが、ともすれば誤解しがちな絵柄の印象に反し、 細部に至るドット絵の作り込みには驚かされます。 フィールド上の「城」のシンボルの屋上には旗が揺れており、 「街」のシンボルでは中央で噴水が動いている。必見です。 >>>>> 豊富な乗り物 ----------------------- 冒険RPGの名に違わず、船や気球などの豊富な乗り物が登場し、 ワールドマップ自体は特段に広いわけではないものの、 「世界を冒険している!」という雰囲気を盛り上げてくれます。 この際だから(*)ネタバレを気にしつつ書いてしまいますが、 「船」「いかだ」「気球」「ドラゴン」「馬車」が登場します。 念のため言っておくと、 ストーリーの一場面として「船での移動シーン」などがある、とかではないですよ? ちゃんと「船のドット絵」を操作して海上を動き回れるのであります。 ちゃんと「気球のドット絵」を操作して空を飛び回れるのであります。 私の知る限り、個人製作のRPGでここまで乗り物にこだわったものは珍しいように思います。 そういえば本作にはいわゆる「ルーラ」のような拠点ワープの手段が存在しないのですが、 「乗り物で移動する楽しさ」を優先させた結果なのかもしません。 (かと言って、不便ではないと言えば少々嘘にはなるのですが) (*) 公式の紹介文でも乗り物については触れられてますので多分大丈夫と判断(馬車はネタバレかも。ごめんなさい)。 気合の入った要素が知られないままでいるよりははるかに良いことだろう、とも勝手ながら判断した次第です。 >>>>> 派手なイベント -------------------------- ストーリー要素がほぼないと言いましたが、冒険を盛り上げる派手な演出は多数登場します。 天変地異で地形が変化したり、神秘のアイテムで奇跡が起きたりと、 プレイヤーを飽きさせることがありません。 ぜひ実際にご自身の目で確かめて欲しい。 ゲームの流れ自体は極シンプルな「戦闘→レベル上げ→次のエリアへ」の繰り返しですが、 上記の乗り物の数々とも相まって、決して単調さを感じることはありません。 基本的なキャラ成長の楽しさを味わいつつ、ゲーム内世界で「冒険を進めている」感覚に浸れます。 >>>>> 戦闘シーンの背景が動的に生成される ----------------------------------------------- 普通にプレイしていると気付きにくいですが、 戦闘シーンの背景がフィールドに合わせて動的に生成されています。 もう一度言います。 戦闘シーンの背景がフィールドに合わせて動的に生成されています。 念のため勘違いのないように説明しておくと、 「草原だから草原の背景」とか「森だから森の背景」とか、そういうことではなく、 敵に遭遇した地点の自キャラ周辺のマップチップに合わせて「動的」に背景グラフィックが生成されているのです。 なお、このため船に乗った状態でも海岸沿いで戦闘シーンになると、陸地のような背景になることがあります。 が、それも当然のこと。海岸沿いを航行してたんだから「陸側から襲われた」んですよ! あと、なぜか洞窟などの屋内系ダンジョンの中でも背景に雲が流れています。 が、それも当然のこと。このゲームのダンジョンの中では雲が流れてるんです! ご覧の通りです! 洞窟の中だから雲がないなどという先入観は捨ててください。 自分の常識が正しいなどという奢りを反省してください。虚心坦懐に表現を受け入れましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- ■ 「いかがだったでしょうか」 ---------------------------------------------------------------------------------- いかがだったでしょうか? 以上、大作RPG『フォーンアイル』の魅力をお伝えして参りました。 シンプルながら「RPG」というジャンルに人々が求めるであろう 必要十分な要素がボリュームたっぷりに詰め込まれた逸品。 この機会にプレイを検討してみてはどうかと思うのですが……。 敢えてもう一度、あなたに問います。 いかがだったでしょうか? ---------------------------------------------------------------------------------- ■ ……と、ここまでが前置き、本題は…… ---------------------------------------------------------------------------------- 正直、『フォーンアイル』のプレイ後記を書くにあたって一体何を書くべきか、ものすごく迷ったのですよ。 ものすごく。 もちろん、書く義務などはありません。そも私ごときがここに書いたところで読む人は限られてもいるでしょう。 しかし黙ってスルーするのは一番卑怯なことであるように思えてなりませんでした。 書くのも書かないのも私の「勝手な行為」に他なりません。 それを承知で私は「書く」ことを選んだ。 しかし、どう考えても、何をどう書いても、どこかが「不適切」になる。 なので、まずは「初手」として「普通のレビュー」っぽいことを一通り書いてしまうことにしました。 本題はそれからだ。 というより、こう言っては大変失礼ですが、 このように「普通のレビュー」っぽいことを書けるだけの内容があった、ということに改めて感慨を覚えます。 まず、「RPGとして最後まで遊べるゲームだったよ!」という事実を皆さんに向けて確認しておきたいと存じます。 ああ、私はなんて失礼な人間なのでしょう。 それにしても何と申しますか、 この『フォーンアイル』という作品を語るにあたり、 そういう、「ゲーム作品」としての価値観やモノサシを持ち出すこと自体に違和感を隠せません。 この作品の存在を知った人の多くは「確かにすごいけど……」とでも言うような、 名状し難い感覚に陥ることと思われます。 その通り、確かに本作は紛れもなく「すごい」。 しかしその後ろに尾を引いて離れようとしない「……」の正体は一体何なのだろう? 本稿ではその「……」の中身の言語化を試みたい。 念のため言っておくと、先に書いた「レビュー」の内容に嘘偽りは1ミリもありません。 そりゃあ多少は「魅力的な面」だけに絞って、やや誇張したところもないではないです。 ぶっちゃけ、「ツッコミどころ」は数え切れないほどあります。 明らかな欠点もあります。バグだってある。ええ、ありますとも。 しかし、どんな名作にだって良い面・悪い面、両方あるじゃないですか。 いや、そういう問題とも違うか。 この『フォーンアイル』という作品のそうした点を一つ一つ挙げて 「批評する」ことに意味があるとは私には思えない。 何か、こう、良い面と悪い面と両方あって…… それぞれを比べて……足し算して引き算してどうのこうの……というようなね、 そのような浮世の些事とは一線を画した別次元に鎮座している。そんな気がしてならないのです。 面白いだとか、つまらないだとか、そんなことはどうだっていいのです。 仮にですよ? あなたが『フォーンアイル』を購入してプレイして、 「なんだこりゃクソゲーじゃん!」と思ったとします。 だから何なんですか? このゲームが「クソゲー」だったとして、そんなことが一体何だと言うのですか? 貴方にこそ問いたい。 貴方は何のためにゲームをプレイするのですか? 貴方は何のために生きているのですか? 一体どんなゲームだったら貴方は満足するというのですか? 一体どんな人生だったら貴方は満足するというのですか? 勘違いしてはいけないのですが、 仮に『フォーンアイル』をプレイして「面白かった」と感じたとしても同じことです。 「面白かった」ですって? そんなことが一体何だと言うのですか? なぜ「面白さ」などというものが必要なのですか? 貴方は何を大切にして生きている人間なのですか? 貴方は何の為にこの世に生まれてきた人間なのですか? 「面白さ」などという言葉で誤魔化すことは許されません。 いいですか? 問われているのは『フォーンアイル』という作品の良し悪しではないのです。 我々自身の生き方こそが問われているのです。 この『フォーンアイル』という作品が、こうして私たちの前に具現化している。 その事実をどのように受け止めるか? それこそが『フォーンアイル』という作品を与えられた現代の我々の課題ではないでしょうか? この課題に取り組まずして我々人類に一体どんな未来があるというのでしょうか? 何を言っているのか分からなくなってきましたッッ!! ぜーはーせーはー。 ---------------------------------------------------------------------------------- ■ 「VC++で白紙から完全手打ちで自力のみで約27万行のプログラムを組んで作成しました」……ッッッ!!!!!!!! ---------------------------------------------------------------------------------- これです。 やはりこの点です。 『フォーンアイル』という偉大な作品を語るに際し、 ここを「見ないフリ」して避けて通るわけにはいきません。 なお、この件に触れるということは、逆説的に、 世間におけるツクール等の制作ツールの存在についても「見ないフリ」で語らずに済ますことはできません。 本作品単体を見るだけでなく、そうした社会的背景を踏まえた上で、 「VC++で白紙から完全手打ちで自力のみで約27万行のプログラムを組んで作成」 という「偉業」の存在意義を理解したい。 もちろん、作者がどんなに頑張って作ったかなど、 受け手であるプレイヤーには「知ったこっちゃない」ことではあります。 これは創作物全般においてそうであり、 受け手の自由さという時に冷酷な現実の前に己が製作物をさらけ出すことこそが 卑しくも「クリエイター」を名乗る全ての者に課せられた宿命と言えましょう。 しかし、こと『フォーンアイル』に限っては、これは当てはまらないことです。 仮に、その他のすべての内容はそのままに、 このゲームがツクール製だったとしたら、どうでしょう? そんなものは『フォーンアイル』ではありません! 仮に、その他のすべての内容はそのままに、 ドット絵やグラフィックだけ神絵師が担当していたとしたら、どうでしょう? そんなものは『フォーンアイル』ではありません! 「VC++で大規模なプログラムを組んで自作された」さらには「音楽もグラフィックもオリジナル」 これらは紛れもなく『フォーンアイル』という作品に分かち難く刻み込まれたアイデンティティに他なりません。 すなわち、我々受け手は姿勢を正し、そうした点を含めてこのゲームを受け止めねばなりません。 それこそがこの偉大な作品をプレイさせていただく我々の義務であり責務であると言えましょう。 ---------------------------------------------------------------------------------- ■ RPGという宿痾・ツクールというカルマ ---------------------------------------------------------------------------------- ゲームというものに、とりわけRPGというものに一定程度親しんで育ってきた人の多くにとって、 「自分だけのRPGを作ってみたい」とは、一度は思うことでありましょう。 実際に作ろうと行動を起こす度合いに個人差はあれど、 かつて自分がRPGをプレイして夢中になり、自分でも作りたいと思ったという原体験があることでしょう。 それはまさに治癒不可能な宿痾のように自己の一部として心の片隅でくすぶり続け、 忘れようにも忘れきれない鈍痛となり日常生活の足取りを重くする。 さて、今は昔、「ゲームを作る」と言えばすなわち「プログラミングをする」と同義であった時代がありました。 そしてRPGと呼ばれる種類のゲームはその他の数多くのジャンルの中でも 特にプログラミングの難易度が高いと言われておりました。 それはおそらく「作りたい」と思う人の多さとも関係していたものと思われます。 「RPGを作りたい」という思いでプログラミングの勉強を始める。 しかし「フィールド」「戦闘」「アイテム」「会話」「イベント」「フラグ管理」などなど、 複数の要素が複雑に絡み合うRPGという種類のゲームシステムはそもそもプログラム作成の難易度が高い。 ましてやプログラミングの学習を始めたばかりの者にとっては尚更のこと。 表に出てこないケースを含めれば、 死屍累々の挫折者を出したであろうことは容易に想像できるところです(私自身、身に覚えが無いと言えば嘘になる)。 それでも、だからこそ、「RPGを作り上げる」ということは ゲーム制作を志す多くの者(=プログラマー)の憧れであり続けた。 そんな中、ツクールシリーズを始めとする各種の制作ツールが登場したことは歴史の必然ではあります。 仮にエンターブレイン社が存在しなかったとしても、 別の会社あるいは個人が同じようなものを作ったに違いありません。 現にツクール以外にも同種のツールが存在することは周知の通り。需要あるところ供給あり。 一般論として技術の発展は歓迎すべきことではあります。 しかし負の側面が存在することもまた事実ではあります。 RPGに限ったことではありませんが、こうしたツールが普及することにより、プログラマーは存在意義を失います。 少なくとも個人制作の規模では、 絵や音楽などのプログラミング以外のスキルを持たない人間は居場所を追われることとなります。 代わって、プログラミングはできないけれど、例えば絵が描ける、といったスキルのポートフォリオを持った人々が 「界隈」に大量に流入することを可能としました。そこに「プログラミングしかできない」人間の居場所はありません。 それまではゲームを、特にRPGを作りたい、という憧れを抱いていてもプログラミングという技能を持たないゆえに、 文字通り「餅を絵に描く」ことしかできなかった人々が、こぞって界隈に押し寄せることとなった。 他方で同時に、「いつかは独自のRPGを……」との大志を抱き研鑽を続けてきていたプログラマー諸氏は その想いをぶつける場を失うこととなった。 もちろん、世にツクールが存在しようとも独自路線を突き進むことは可能ではあります。 が、既に完成されたシステムが世の中に存在する以上、 「なんでわざわざ独自開発?」と、存在意義を問われることになるのは避けられません。 どうしても独自路線でいくならば、システム面でツクール以上のものがなければ立つ瀬はなく、 そのハードルは以前にも増して高いものとなる。 しかも、わざわざそこまでする理由はと言えば、 目指すゲームが余程特殊なシステムを必要とするものであるのでない限り、 「自分はプログラミングで作りたいから」という「個人的なこだわり」に過ぎず、 そうこうしている間にも日々、既存のシステムの恩恵に躊躇なく浴して盛り上がる界隈を尻目に、 プログラミングという「見栄えのしない・地味な」行為に年月を費やし、くすぶり続けることになってしまう。 このような環境でモチベーションを保つことのできる強靭な精神力を備えた人間はそうそう存在しないのであり、 事実、個人制作界隈にRPGと名のつく「作品」は数あれど、 ツクール等の普及以降、独自システムを使用したものは極めて例外的存在とならざるを得なかったわけです。 では、しかし、それとは逆に、プログラミング技能を持たない人々にとっては、 ツクール等の登場は純粋に「恩恵」とばかり言えるものだったのでしょうか? それまでは「夢のまた夢」であった「自分だけのRPGを作る」ということが手の届くものとなった。 あるいは少なくとも「そのように思える」ものとなった。 さて、想像してみてください。 空を飛ぶ車が発明されたらどうなるか? え? 目的地までひとっ飛びできるようになって便利に決まってる、ですって? 寝言は寝てから言ってください。 空飛ぶ車を持っているのが世界で貴方一人だけだったらそうかもしれません。 しかし、貴方が空飛ぶ車を入手できるということは、 他の人々も同じように空飛ぶ車を入手できるということです。 広大だったはずの空はたちまち大量の飛行車で埋め尽くされ、 少し動けば互いに衝突し、目的地は実質的に以前以上に遠のくこととなる。 事は飛行車の購入者だけの問題にとどまらない。 地上から見上げる空の景色が一変してしまう。 そこにはもう、地上の喧騒を離れた快適な空間は存在しない。 空飛ぶ車は結局のところ、「地上の喧騒」を丸ごと空に持ち込むだけです。 ツクールの登場は数多の人々に夢を持たせたものの、 そこに出現したのは、同じような夢を持った人々が大挙してせめぎ合う空間に他なりません。 「自分だけのRPGを作る」という輝かしい夢は、 制作ツールを販売する企業の「商品」として消費されるコモディティと化した。 さらに、ツクールのような制作ツールが存在したとしても、 「RPGを作る」という行為は依然としてハードルの高いものには違いありません。 正確に言えば、下がったのは「RPGを作り始める」ことのハードルなのであり、 「完成させる」ことのハードルは決して下がりはしなかった。 つまりツクールの登場がもたらしたのは、 作り始めたものの、完成させることはできなかった大量の挫折者です。 その厚み・重みを人数の多寡で語ることに意味があるかどうかは不明ながら、 参入障壁自体の低さから推測するに、 プログラミングでの登頂に挑み、途中での下山を余儀なくされたケースや 遭難の憂き目に遭ったケースよりは多いものと想像されます。 あるいはプログラミング志望者にとっては、早い段階で、もしくはその萌芽の時点で、 「独自システムでのRPG開発」という蛮勇の芽を摘み取ってくれているという意味で、 ツクールの存在は恩寵と言わざるを得ないのかもしれません。 一方、別方面からさらに多くの人々を底なし沼に引きずり込んだという罪もあるというのは前述のとおり。 そこはまた、激しい競争の場であるということも忘れてはならないでしょう。 参入のハードルが下がるということは、競争が激しくなるということであり、 「埋もれる」ケースが多発するということでもあります。 ツクールを入手したのに完成させることができないという壁を乗り越えたとしても、 次に待ち受けているのは、完成には漕ぎ着けたものの埋もれてしまうという壁です。 作り手の絶対数が増えても全体的な受け手側のパイの大きさには限りがある。 せっかく作っても見向きもされないなどよくあること。なぜなら「貴方は目立たない」からです。 なお当然ながらこの競争は(潜在的に)ツクール等を使わない作品をも巻き込むことになる。 敢えて使わないことをアドバンテージにせよというお題目が赤すぎる海に飲まれて消える。 もちろん、大量の挫折者が死屍累々と積み重なる一方、厚みを増した層からは数々の「名作」が輩出されもする。 それがまた分厚い暗雲の彼方で輝きを放つ月となり、次なる「勇者」の挑戦を誘う。 これを「好循環」と見るか「悪循環」と見るかは、ひとえに視点の置き場所によるでしょう。 敢えて私個人から一言申し上げておくと、 ゲームはこの世に必要なものではないが、人間の苦悩は現実のものである、とだけ言っておきたいと思います。 ---------------------------------------------------------------------------------- ■ 『フォーンアイル』の衝撃 ---------------------------------------------------------------------------------- ゲームを、とりわけRPGを作るという行為は既にそれ自体が「嗜みの対象」たるアミューズメントとして囲い込まれ、 野性のプログラマーが躍動する原野は消失したのでした。 これ自体は起きるべくして起きてきた歴史の必然であり、時計の針が逆戻りすることはないものと思われます。 そこへ彗星の如く登場したのが『フォーンアイル』です。 > VC++で白紙から完全手打ちで自力のみで約27万行のプログラムを組んで作成しました。 > グラフィックも音楽もオリジナル。 まさか、やりおったのか……? 「完全登頂」を……ッッ!!! まさに衝撃。 私が初めて『フォーンアイル』の存在を知ったのは、 ゲーム制作界隈で有名な某氏がTwitterで言及してらしたのを見かけたことだったと記憶しております。 「畏敬を覚える」といったことをおっしゃっていたかと思います。 まったくの同感です。 私の知る限り、事前のプロモーションのようなものはなかったように思います。 大作であればどこか大手のサークルが開発段階から各種SNSで進捗報告を行ったり、イベントで評価版を配布したり…… というのがよくあるケースですが、本作は(紛れもない "大作" であるにもかかわらず)どうやらそういったこともなく、 文字通り「個人」で、コツコツを作成を続けてこられたものと想像いたします。 (ちなみに開発中および公開後もしばらくの間は作者氏はTwitterのアカウントはお持ちでなかったご様子) ゲーム制作界隈に長く携わっている人であるほど、 本作の「偉大さ」に思いを馳せずにいられないことと思われます。 単なる1ゲーム作品であるという枠を突き抜ける衝撃がそこにある。 「畏敬」 この作品へ手向ける言葉として、これ以上に的確なものがありえるか? だが、このわだかまりは何だろう? 私や貴方が言語化するその「畏敬」とは、しかし、如何なるものなのか? 褒めるのでも貶すのでもない、この聞こえのいい言葉の含意は何なのか? この小さな一言の中に、一体何を封じ去ろうと画策しているというのか? この作品を前にしたときに我々が感じずにいられない「畏敬」とは、単なる無邪気な賞賛ではなく、 そこまでして「完全登頂」を成し遂げたとしても、世間的に芳しい評価を得られる可能性が高いとは思えない、という 現実の冷たさを知った上での、ことによると冷笑の念をもどこかに含まざるを得ないものとしての、 同時に、自分自身はその「現実」の側に立ち、「偉大な登頂」を避けて立ち回る道を選んでしまった、という、 輝ける太陽の前で隠すところなく照らし出される自己自身の姿に気恥ずかしさを覚え、 身の置き所のない裸体を晒して「うろたえる」感覚に陥らざるを得ないというものではないでしょうか。 あるいは「無邪気な賞賛」という装いを選ぶことで、 自己自身の側の「小ずるさ」を隠すという、それ自体「小ずるい」作為もまた そこに込めざるを得ないものであるかもしれません。 この作品の前では、誰もが「卑怯者」にならざるを得ない。 本作はビジュアル的には「見てのとおり」であり、 見た目以外に関しても、実際にクリアに至るまでプレイをした私の感ずるところでは、 あくまでも純粋なプレイヤーとしては、 必ずしも手放しで賞賛できる部分ばかりではなかったのは正直なところです。 が、だからこそ「完全登頂」が成し遂げられた成果物であるというこの作品の存在感が際立ち、私を圧倒せずにおかない。 仮に、この作品がツクール製であれば「よくある個人制作のRPG」の枠を出るものでなかったであろうことは前述のとおり。 また、グラフィックや音楽だけが専任の「神」スタッフの手によるものであったとしても同様であろうことは前述のとおり。 「完全登頂」という偉大さと、「世間の冷笑」という抗えない寒さ。 この作品の前に立つ者は、安易な止揚を突っぱねる2つの地平に引き裂かれ、 自己自身の立ち位置を選択せよと迫られる。 この作品を、見下す・自分の・薄汚さ。 この作品を、褒める・自分の・小ずるさ。 あるいは「見なかったフリ」をして避けて通るのがもっとも楽な道なのかもしれない。 安全な立ち位置で距離を保っているのが自己自身の精神的安定にはもっとも効率的に寄与するものであるかもしれない。 しかし、『フォーンアイル』という作品は現に存在してしまっているのです。 「ツクール的なもの」が世間を席巻したのが歴史の必然であるとするならば、 その必然の濁流を穿つように『フォーンアイル』が登場したこともまたある種の運命、 あるいはそのような歴史を「必然」などと称して斜に構え、時に卑屈に、時に軽薄に流されてきた我々自身の、 まさにその我々自身が溜め込んできたカルマを暴き出す出来事であるように思えてなりません。 選ばざるを得ない。 「見なかったフリ」をするとしても、 それもまた「自己自身の選択」に他なりません。 器用な距離をおいて「少しは気にしてる素振り」を演じて見せるとしても、 それもまた「自己自身の選択」に他なりません。 「選ばないことを選ぶ」のも同様。 逃げ場など存在しない。誤魔化すことは不可能。 私は、さしあたり、この『フォーンアイル』を実際にプレイすることを選びました。 あなたは何を選びますか? ---------------------------------------------------------------------------------- ■ 何というか、その、あれです。 ---------------------------------------------------------------------------------- 有料のゲームですが、高い価格帯ということはなく、内容自体は結構充実してますし、 見た目は「人を選ぶ」感じではありますが、魅力は充分すぎるほどありますし、 決して手抜きでないどころか相当作り込まれたものであることは少し見れば分かりますし、 ぶっちゃけバグは目立つし、操作感覚にもクセがあって、 ゲーム以前にソフトウェアとして「使いにくさ」を感じる点が多々あるのも事実ですが、 それを承知の上で「やってみる」価値は充分すぎるほどあると思いますよ、という感じです。 ……と、「小ずるく」まとめてみましたが、「いかがだったでしょうか」?! 卑怯ついでに、以下、弁解などを少々。 何か批判がましいことを書いたような印象を与えてしまったかもしれません。 今回私は『フォーンアイル』という作品にかかり、この作品自体についてというよりは、むしろ、 この作品がこの世に具現化したという現象の全体、 いわば「フォーンアイル現象」について語ろうとしたつもりです。 これは単に「ゲームを作った・プレイした・面白かった・つまらなかった」 という次元にとどまらない現象です。 (逆に言うと、その次元だけで語ってしまうと、見失うものがあるでしょう) 誰かを攻撃しようなどという意図はないのですが、 「フォーンアイル現象」を語るにあたり、手放しで「いいこと」ばかりを書いたのでは嘘になってしまう。 結果、それを「批判」と解釈するとして、対象は何なのかというのは慎重に読み取っていただければとは思います。 当然ながら、率直に言って、これほどの作品を作り上げた作者氏への「畏敬」の念は禁じ得ないところです。 しかしながら、それだけを言って「片付けて」しまうのは卑怯だろうというのは既に述べたとおり。 念のため申し添えておくと、 ツクール等を使うこと(または使わないこと)が「よい・悪い」という単純な話をしたつもりではありません。 そのように言われている気がして気分を害してしまった人がいるかもしれませんが、 少なくとも、それは私の本意ではない、とはお伝えしておきます。 言葉の選び方に不適切な点があったとすれば、私の至らなさであります。 その他、どういった立場の人に対しても「おまえが悪い」などと言ったつもりはないのですが、 ただ、どの事象を取り沙汰するにせよ、多面的な現実の中、良い影響もあれば悪い影響もあるのであり、 さらに、個人の選択は、どのようなものであれ、世の中全体の流れとも様々な形で双方向に連環する。 それを踏まえた上で、 どういった価値観に基づいて、どういった行動をとるかは、 各自、自分で選び取るしかないよね、という話です。 特定の何かや誰かを裁いてみたところで、 次は誰が裁かれる番なのかという爆弾トスゲームに過ぎないわけですが、 あるいはそれもまた様式化されたアミューズメントの一種だったりはするでしょうか。 「フォーンアイル現象」が展開する場において、 そこでは『フォーンアイル』の作者のみならず、一人の受け手である私もまた舞台の参加者であり、 それを見ている貴方もまた客席に紛れる観客ではなく舞台上の参加者であるとは申し上げておきたい。 同時代のすべての人々がこの現象の渦中にいる。 誰であれ『フォーンアイル』の光からは逃れられないのであります。 シナリオは存在せず、一人一人の選択のみが歴史を作る。 一体なぜこうなったのか? 神に問いかけても詮ないこと。 様々な事象が生成消滅を繰り返す場の全体を包括的に捉え、そこに生きる貴方や私の労苦を、哀しみを、 願わくば慈悲の心をも共有することができたなら、これに勝るものはありません。 何を言ってるかよく分からなくなって参りました。ぎゃふん。 ---------------------------------------------------------------------------------- ■ お待ちかね、攻略情報ぉ〜! わーわーぱちぱち。 ---------------------------------------------------------------------------------- 以下、後進の勇者諸君のため、実際にクリアを達成した私から、 少々凶悪と思われる箇所に関して、ネタバレを承知で攻略情報を掲載いたします。 ゲームとしては一本道なのに、そこを突破しないと「詰まってしまう」わけですよ。 それは少々もったいないと思われますので、無理をせずご利用になることをお勧めいたします。 >>>>> 中盤「ピンク色の塔」の落とし穴 ------------------------------------------ 塔のボスキャラがいる領域の周辺をぐるりと取り囲むように落とし穴が配置されており、 落ちると時間のかかるリフトを経由して戻ってこなければならなくなります。 どこかにスイッチのようなものでもあるのかと思いましたが、 私がプレイした限りでは、落とし穴のない床を地道に1マスずつ探して進むしかないようです。 ここで苦労することがゲームの本質ではない気がしますので、 以下に、安全な隙間が存在する大雑把な位置を掲載いたします。 直前でセーブして、失敗したらリセット、という手法で試行錯誤されるとよいのではないかと思います。 --------- ↓ここを選択して反転させてね↓ ----------- ボスキャラがいるエリアの右下の角付近 ----------------------------------------------------- >>>>> 終盤「地獄の扉」の落とし穴 ----------------------------------------- また落とし穴かよという感じですが、はい、落とし穴とは何度体験しても良いもの。 上記の塔と同様、大雑把な位置を掲載しますので、ゲームが嫌になる前にご活用ください。 --------- ↓ここを選択して反転させてね↓ ----------- ボスキャラがいるエリアの左上の角付近 ----------------------------------------------------- >>>>> セーブデータの管理方法 ----------------------------------------- ゲームの攻略とは少し違いますが、セーブデータの管理方法についても付記しておきます。 このゲームはフィールド上のどこででもセーブが可能です。 それでいて、戦闘で死ぬとゲームオーバーとなり、タイトル画面に戻されます。 つまり、例えばHPが低い状態でダンジョンの奥深くでセーブしてしまうと、 そのセーブデータは「詰み」になってしまうということです。 他にも「今ここでセーブしたら詰みなんじゃね?」というシチュエーションが多々あり、 セーブには慎重を期す必要があります。 さらに悪いことに、セーブスロットが3つしかありません。 安全にゲームを進めていくために、 セーブデータのファイル自体を適宜バックアップしておくことをお勧めいたします。 同梱の説明書にも書いてあるとおり、 「memory_001.dat〜memory_005.dat」というのがセーブデータのようです。 ファイルは5つありますが、ゲーム内のセーブスロットは3つしかありません。 どういう仕組みなのかは分かりませんが、この5つを漏れなくセットで取り回す必要があるようです。 どれかを単独で差し替えると不具合の元になるのでお勧めはできません。 自分でどこかにフォルダを作り、例えば「船入手直後」のように進行状況が分かるような名前にして、 その時点でのセーブデータ(5つ)を丸ごとバックアップしておくとよいのではないかと思います。 余談。 PCの技術的に言えば、スロットが3つしか用意できないなどということはないと思うのですよ。 ましてやこれほどの大作を作り上げるほどのお方。 あくまで多分ですが……ファミコンのドラクエ3〜4では「ぼうけんのしょ」のスロットが3つだったから、 それをオマージュ?しているのではないか……と私は推測しています。 あとちなみに、セーブ以外に「パスワード」という「ふっかつのじゅもん」のようなフィーチャーがあるのですが、 異様に長い上にコピペ不可能というドラクエ2も裸足で逃げ出す激辛仕様となっております。必見。 (私は一度も使ったことがありません。誰か挑戦してみて) ---------------------------------------------------------------------------------- ■ 最後に、僭越ながら改善案を ---------------------------------------------------------------------------------- 正直「ツッコミどころ」が多々あるのは事実ながら、 そこに目を奪われては本作の存在意義を見失うことになるだろうと判断し、敢えて直接的には触れずにきました。 というより、放置しておくとどこかのYouTuberあたりが「ネタゲー」扱いしてしまうのではないかと危惧を感じました。 今のところ「有料」であることで、この作品の尊厳が守られているように思いますが、 現在は体験版も公開されているようですし、今後果たしてどうなるかは不明です。 そのことも、こうしてこのテキストを書こうと思った動機の1つだったりはします。 「受け手側は自由」ではありますが、それはちょっといかがなものか、と非力かつ僭越ながら牽制しておきたい。 などと偉そうなことを思ってしまうのは私自身も一応は「作る側」だからでしょうかね。 が、ここまで踏み込んで語ってしまった以上、 私としても、それらに一言も触れないというのもまた無責任なことであると考えます。 したがいまして、1つだけ、 プレイしていて「ここが改善されれば……」と感じた点を申し上げておきたいと存じます。 さて、ネットを軽く見て回ったところ、本作に言及する声は決して少なくはありません。 が、「見た目」に言及して、「グラフィックをどうにかすれば」的なものが多い。 浅いですね。 実際に手には取らずに第一印象だけで言っていることが明白です。 一方、実際にプレイしたのみならずクリアにまで至り、 今や作者以外では『フォーンアイル』の世界的権威となったこの私に言わせれば、 この作品の向上の伸びしろはそこではない。 正味の話、一番のネックは「戦闘のテンポ」です。 先述のとおり、戦闘システムはいわゆるコマンド選択式のフロントビュー。 で、コマンドを全キャラ分選択した後の、メッセージの表示が遅い。 正確に言うと、メッセージとメッセージの間に毎回ウェイトが入るようになっている。 「○○の攻撃! ……………… ××にnポイントのダメージ!……………… ××を倒した! ………………」 という具合です。 これが結構長い! 微妙な事と言えば微妙な事ですが、これが毎回続くと、ストレスがたまってしまう。 何しろ「王道RPG」ですから、ザコ戦は何度もこなす必要があるわけです。 表示されるメッセージを見落とさないように、という作者様の配慮かな、とも推測しますが、 戦闘システム自体はシンプルなものであり、じっくりと戦略を練って取り組むようなものではありません。 悪く言えば単純作業です。 いっそメッセージが読み取れない速度で流れるように進行するぐらいで丁度いいと私は思います。 一応「設定」で「戦闘スピード」を変更できるようになっているのですが、 これを「速い」にしても、肝心の「メッセージ間のウェイト」が変わらない。 何が変わるかと言えば、各テキスト自体の表示速度が変わるのみです。 そうじゃないんですよぉ〜、と待ち時間の長い画面に向かってボヤかずにはいられません。 あるいは早送りボタンがついていれば快適かなと思うのですが……。 その他の大抵のことはプレイを重ねているうちに慣れます。 フリーズしないように宿屋に泊まる方法だって分かってくる。 ところが戦闘のたびに「待たされる」のはプレイを重ねるほどストレスになってしまう。 (全員「打撃」を選択し、ネットなどを見ながら時間を潰すのがコツだったりもする) そこさえ解消されればバグの存在すら問題ではない。 サクサクとプレイできるようになれば神ゲーの名すら生ぬるい存在になることでしょう。 ビジュアルの「改善」を求めるなど言語道断、軽佻浮薄の極み。 そんなことをしたらそれこそ「そんじょそこらのフツーのRPG」に堕してしまうじゃないですか。 このビジュアルあっての『フォーンアイル』であることが理解できないようでは、まだまだ未熟者と言わざるを得ません。 あるいは恐れているのかもしれませんね、この『フォーンアイル』の底知れぬ存在感を。 このビジュアルという重大な牙の1本を抜かせてしまおうと画策するなど、 如何にも小物に相応しい姑息な企みと言えましょう。 今後は「フォーンアイル風」と呼ばれる表現形式が世間を席巻していく、そんな未来だって充分にあり得るのであります。 ……と、思ったのですが、それを言い出せば、戦闘のテンポも『フォーンアイル』らしさの一部かな? 作者様がここをお読みになるかどうかは分かりませんが、 どうか私の言うことなど真に受けず、独自の道を追求していただきたいと切に願います。 (私はもうクリアしちゃってるんで、好きなことが言えるのではある) では最後にもう一度、公式の配布ページへのリンクを掲載しておきます。 ・DLsite → FAUN AIR ーフォーンアイルー ・Steam → FAUN AIR ーフォーンアイルー さぁ、貴方はどうしますか? 貴方の行動を選ぶのは貴方自身です。