ワリュカラ・ナリコーソン
【システム:選択肢でルートに分岐。戦闘あり】 【目安総プレイ時間:6時間】 【制作:オデット・プーペ様】
こことは異なるいくつもの平行世界がある。
「異界」と呼ばれる不安定な世界が、この世界を侵食しようとしている。
ある日主人公は侵食してきた「異界」に迷い込み、そこへ異界の怪物が襲ってきた。
そのとき、平行世界を旅して「異界」の侵食から世界を救う一団が現れ、主人公は告げられる。
「──力を貸してくれ」
[このゲームが公開されているページ]
http://odettepuupe.web.fc2.com/waryu/top.html
■ プレイガイド
随所で戦闘イベントが発生。システムはいわゆるフロントビューのRPGのような感じ。 序盤にチュートリアルがあります。少し凝った要素もあり。 難易度的なことに関して言うと、これが原因で進行が詰まってしまうということは多分ないと思われる感じです。
ルート(キャラ)は6本。 わりと分かりやすい選択肢がついているので、ルートに入るのは難しくないと思います。 ただし、一部隠しキャラのようなのもいるのでイロイロ試してみるべし。
隠しキャラのような、とは言っても、キャラの存在自体はタイトルメニューの「絵」「ED等」から確認できます。
なお、ルートをクリアした後に解放される「おまけ」は必見。本編だけでなく、おまけシナリオ込みで物語の全容が見えてきます。
■ 感想(※微ネタバレ)
個人制作のノベルゲームで攻略対象が6キャラというのは、かなり多い方ですね。 舞台が「平行世界」ということで、時代や文化を超えた多彩なキャラが。 程よいボリュームで、コンプ要素まであり、ゲームとしてしっかり楽しめました。 気合の入った影絵も必見。
特に印象に残ったのは、やや隠しキャラ的な立ち位置にいる例の白い謎の人です。 このキャラに触れずして、「ワリュカラ・ナリコーソン」を語ることはできないでしょう。 というわけで、ここから先はネタバレ度が高くなりますので、ご興味のある方は実際にプレイした後にお読みになることを推奨いたします。
ではここから先は「白い人」と遠回しに言わず「リーベ」と記載します。 リーベは世界観と密接に関わるキャラであり、影の主役的な感じがします。 こう言っては何ですが仮に他キャラを全員差し替えたとしても彼だけは不可欠なのでは。
「世界を消せば苦しみも無くなる」というリーベの思想は非常に興味深いですね。 ただ、話の縦糸が「愛の力でリーベの考えを変えさせる」という感じになってるのは作品としては意図通りなのかな? ゲーム的にはBADENDも完備なので、どの結末に同意するかはプレイヤー次第かもしれませんね。
リーベという名前はドイツ語のLiebe(愛)由来ですかね? 「世界を無に」と言うキャラにこの名を付けている辺り、まさに「反」の思想の根幹に通じるものを感じます。 唯一BADENDが用意されているキャラでもあり、一番ストーリー的に気を遣って作られているルートという印象も受けます (主人公と水面氏との別れの会話も他ルートより細かい!)
リーベの思想自体はいわゆる「反」的なツボを押さえている一方、 主人公陣営の反応が「反」に「反」する人々の典型的なそれで、 さらにリーベの人物像が「人情に疎い石頭くん」的なのも彼らにとってはむしろ好都合で、 「考えを変えさせてやる」ストーリーが成立すべくして成立しているようには見えます。
リーベの思想自体は「リーベ」という個人が「考えを変え」たとしても依然として「我々の課題」であり続けますね。 エンドの1つの最後のセリフ「お前達を見ている。どこまで出来るかやってみせろ」で現実の読者にテーマが手渡しされましたね。 「本当のお話」はそこからなのかもしれない、なんて思いました。