終わりに見えた白い明日
【システム:選択肢あり】 【目安総プレイ時間:3時間】 【制作:ReIce-zero-様】
人類の生命力が枯渇しつつある近未来のような世界。 「死」の気配が充満する中で、表面上はこれまでと変わらないかのような日常を送ろうとする少年少女の物語。
[公式HP]
http://reice2nd.yu-yake.com/owashiro.html
■ プレイガイド
一定箇所まで進めると章が終了し、タイトル画面で次章が選べるようになる形式。 途中、選択肢はありますがストーリーの大筋は変わらない模様。 初めは断片的に語られていた要素が、終盤に近づくにつれ、つながってきます。
■ 感想と考察(※ネタバレ)
なかなか難解な内容ですね。 テーマ的な部分もさることながら、真相が最初は断片的に語られて、徐々に明かされていく、という形式なので、 一読しただけで正確な事実関係を把握するのは難しいと感じます。
以下、ネタバレ
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まずは正直なところ、SF的な(?)設定や事実関係の細部に関しては私には不明な点も多かった、と白状しておきます。 雰囲気から判断して「生」と「死」に関するストーリーであることは間違いないと思いますが、 細部についてはあまり突き詰めず、あくまで全体的に感じ取ったことに基づいた私なりの感想を書くにとどめることにいたします。
さて、テーマ的な側面に注目して細部を省いて大まかに内容を整理すると次のような感じでしょうか。 人類の生命力が枯渇したディストピア風の世界。 そんな中で、人と人が想い合う(家族のような)「ぬくもり」が、新たな生命力(希望)になっていく。 本編で描かれている主人公やヒロインたちは、そうした時代の流れの渦中を生きる、ささやかな一例である……と。
主人公の路地裏での行動を客観的に表現してしまえば「人が灰になる様子を看取っていた」だけ、と言えば「だけ」ではあるようですが、 それを敢えて「人の死を背負う」と表現している。そこのところに、人の死を単なる物理現象として片付けるのではなく、 その人がその人なりに生きた事実を受け止めようとする「覚悟に満ちた共感=気概」のようなものが込められていると解釈しました。
「死を見たときだけ正気に戻れる」という部分には、 「死」を極端に覆い隠す現代的な風潮が逆説的に「生」から生命力を奪っている、という指摘が込められているような気がしました。 「出生率が極度に低下した世界」というのも、「生」と「死」のバランスが崩壊した影響だったりするのかも。 「死」を蔑ろにすることは結局は「生」を蔑ろにすることにもなるのかも、などと思ったり。
暴力や「いじめ」といった、人間の負の側面の描写に多くを割いているのも本作品の特徴ですね。 人間というものに希望を持ちにくい世界、厭世的にならざるを得ない環境、 そういうものを敢えて前面に出すことで、予定調和なハートフル物語になることを避けつつ、 疑いの地平に降りた上で「生」の意味を問いかける空間を表現しようとしたのではないか……と推測します。
私が読解した限りでは、具体的に何か「答え」のようなものが提示されているわけではないようですが、 だからこその「白い明日」なのであり、そこで「終わり」ではなく、 どういう未来を作っていくのかという自分たちの意思こそが重要なのだ、ということかなと受け止めました。
話は変わりますが、終盤になるにつれて立ち絵が表示されない場面が増えていくことにも気付きました。 しかし違和感が全然ない。 意図的に狙ってそうしているのかどうかは分かりませんが、 キャラクターの容姿自体は序盤で示されているのであり、機能的な意味では立ち絵は役割を終えており、無くても構わないのですよね。 むしろ終盤では文章のみであることによって、表情の細かさが柔軟に想像できる、という効果があるのかも……と、読みながら感じました。