姫金魚の御筥
【システム:選択肢で分岐】 【目安総プレイ時間:4時間】 【制作:M project様】
江戸時代風の世界が舞台の和風ファンタジー乙女ゲーム。
とある事件に巻き込まれて殿様の正室候補としてお城に住む事に。そこには当の殿様以外にも多くの出会いが。
[このゲームが公開されているページ]
http://www.vector.co.jp/soft/win95/game/se496705.html
[作者公式ページ]
http://himehako.kachoufuugetu.net/
■ プレイガイド
誰に会うかを直接選べる選択肢があるのでルートには入り易い。 露骨なバッドや即死終了はなく、何を選択しても話自体は続く反面、正規エンドにならなかった場合にどこが間違っていたのかについては試行錯誤あるのみ。
主人公の名前入力欄が初期状態では空欄なので名付けに迷うところですが、 公式サイトによると「富樫実柚」がデフォルト名だそうです。
■ 少しだけ攻略情報
一部にトリッキーな選択肢が存在します。
「特定のキャラの正規ENDに辿り着けないな〜」と思うことがあったら、ご参考になるかも。
反転してご覧ください。
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冒頭で出現する「逃げる/叫ぶ」という選択には時間制限があります。
しばらく放置していると表示されていない第3の選択肢を選んだことになり、双子に助けられるオープニングに入ります。
■ 感想(※ネタバレ有)
いわゆる「身分違いの恋愛」を縦糸に語られる物語ですが、 「怨霊」への対処の仕方に各キャラの人生観が表れていて興味深いですね。
以下、ネタバレ
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・双子
「怨霊」の立場に立ってみれば理不尽に殺されたことや町の人々に見て見ぬ振りをされたことは事実なので、 自分が弱いのが悪いという理論はちょっと冷酷なんじゃないのかという気が私はするのですが、 双子たち自身の、自分(達)は大切な人を守るぞという決意の表れなんだろうなとは思いますね。
一方、その彼らが風邪で寝込んだときには、今まで他人の助けが得られず自力で気を張って生きてきたことが明かされるのでした。 主人公の善意に触れて、彼らの中で何か感じるところがあったのではないかなと思います。
・東影
この人も「怨霊」に対しては冷酷なようですが、 「大切な人を守れなかった」という過去を背負っている点で怨霊と共通するものがあり、 その意味では誰よりも「怨霊」の「気持ちを汲む」ことができる立場だったようにも思えますね。
「違う道」がなかったのかという問いが尾を引く形となりますが、 その後、人から幸せを願われていることを知って罪の意識から解放された東影の生き方自体が一つの答えということかなと思います。
・直正
前の城主とともに事件の隠蔽に関わったことに責任を感じていた直正にとって、親子のことを「覚えている」ことは重要な意味を持ちますね。 その直正が、後の宴会のシーンでは酒に酔って記憶を失いかけたのは只事ではない。
押しの強い殿方が多い本ゲームの中、奥手キャラとして主人公と「似た者同士」になれるのは貴重な役どころですね。 そんな彼だからこそ、最後に主人公に対して自分の気持ちを誤魔化さずに自分の口で伝えるシーンには重みを感じます。
・成明
隠蔽事件の中心人物は彼の先代ではありますが、その後を継いだ者として、精一杯責任を果たそうとしている感じですね。 これが東影や銀一郎だったら、自分の知ったことではない的なことを言いそうな気がしますが、 しっかりと責任を引き受けようとしているのは成明のリーダーとしての風格が出ているところかなと思います。
その後、成明が政務に励むようになったのは町の人々に見殺しにされたことを怨んで怨霊になっていた子供にとっても救いになるのかもしれませんね。
・銀一郎
自分自身も理不尽な目に遭って生きてきた銀一郎にとって、理不尽に惨殺された怨霊の気持ちは「痛いほどわかる」と同時に、 それで「同情を引こう」とする様子には嫌悪を感じるわけですね。
双子ルートや東影ルートと同様、怨霊に対する彼の対応には冷酷さを感じざるを得ない所はありますが、 身を挺して庇おうとする主人公の善意に触れて怨霊が成仏(?)できたのは救いのある展開ですね。 「その苦しみを断ち切ってやる」と言うあたり、 銀一郎は実はそういう展開になることまで計算して行動していた部分もあったりするのかも?(本音半分、計算半分と言ったところでしょうか?)
・まとめ
怨霊が怨霊になる原因となった親子惨殺事件の 「理不尽さ」「大切な人を守れなかったこと」「人々に見捨てられたこと」などが 各キャラクターの人生観を浮き彫りにするフィルターになっていましたね。
いわゆる「身分違いの恋愛」を縦糸に語られる物語ですが、 むしろ「本来は接点の無かった人々」の中に主人公という観測者を招き入れて、 怨霊事件を通して各人物の人生課題に向き合いつつ、主人公との恋愛という形で救いに向かっていく物語だったなと思います。
事件自体はどこまで行っても理不尽だったことに変わりはありませんが、 この世を生き続ける者として各キャラがそれぞれに「幸せ」を掴むことが、怨霊さんにとっても浮かばれる結末であって欲しいと願うばかりです。