科目は政治思想史。教養課程の選択科目の一つだ。
例によって特に興味があったわけではなく、単位を取得するために履修しているだけだ。
広い講堂にマイクで拡大された講師の声が響いている。
俺にとっては気を抜くと簡単に眠りに落ちてしまいそうな内容の話だ。
だが今日は少しだけ印象に残る箇所があった。
テーマは民主主義の起源だったか、何かそういうような講義だ。
その中で、日本の高校で実際に起きたというエピソードが語られた。
クラスで何か決め事がなされた。さらに、それに違反した場合は皆の前で裸になるという罰則も決められた。
それらは多数決で決定され、規則として運用されることとなった。
その後、ある女子生徒がその申し合わせに違反し、裸刑が実行されそうになった。
担任の教師はまずいと思い、止めさせようとした。
しかし生徒達は反論した。
これは多数決で決めた結論なのであり、それを教師の一存でひっくり返すのは民主主義に反している。教師の横暴だ。
クラスがおかしな雰囲気になってきた。
教師はどこが問題なのかを説明することができなかった。そして生徒達との議論に負けてしまった。
その結果、女子生徒の裸刑が執行されてしまった。
「さて、これの何が問題だったんでしょう? みなさんもそれぞれに考えてみてください」
講師のその言葉でこの日の講義は締めくくられた。