「本当は亮ちゃんもわかってるんじゃない?
亮ちゃんだけじゃない。みんな本当はわかってるんだ。
答えなんて一つしかない。
それを認めずにごまかしてる。
人によって言うことが違っているように見えるけど、それは、ごまかし方に違いがあるだけ。
答えは一つでも、ごまかし方は自由自在だからね」
亮ちゃんだけじゃない。みんな本当はわかってるんだ。
答えなんて一つしかない。
それを認めずにごまかしてる。
人によって言うことが違っているように見えるけど、それは、ごまかし方に違いがあるだけ。
答えは一つでも、ごまかし方は自由自在だからね」
「……自殺なんて、どうせ本気じゃないんだろ?」
「亮ちゃんはどう思う?」
「実行する気もないくせに、人騒がせなこと言ってるだけなんだろ? そういうのはやめた方がいいんじゃないのか?」
「そうだね。私には "騒がせる" つもりはなくても、"人騒がせ" になってしまうよね。わかります。
だから、私はできる限り他人とは関わらないことにしてる。
その点、亮ちゃんと知子ちゃんには、謝らなきゃいけないね。
生きてる時間が長ければ長いほど、他人と関わってしまう。
一番いいのは生まれて来ないことだったんだけど、今更それを言っても仕方がない。
これ以上できるだけ間違いを広げないように慎むのが今の私にできるせめてものこと。
特に、子供は絶対に産まない。
生きるのが無意味なことだってわかってるのに、それをまた子供という他人に押し付けるなんて、 生まれてきた後にしちゃいけないことの最たるものだよ。殺人よりもタチが悪い」
だから、私はできる限り他人とは関わらないことにしてる。
その点、亮ちゃんと知子ちゃんには、謝らなきゃいけないね。
生きてる時間が長ければ長いほど、他人と関わってしまう。
一番いいのは生まれて来ないことだったんだけど、今更それを言っても仕方がない。
これ以上できるだけ間違いを広げないように慎むのが今の私にできるせめてものこと。
特に、子供は絶対に産まない。
生きるのが無意味なことだってわかってるのに、それをまた子供という他人に押し付けるなんて、 生まれてきた後にしちゃいけないことの最たるものだよ。殺人よりもタチが悪い」
今のキリエの発言は、少なからぬ人にとっては受け入れることのできない不愉快なものだろう。
だがここにいるのは俺とキリエの二人だけだ。
キリエもおそらく俺には "通じる" と判断しているからこそ本心を語っているのだろう。
では実際のところ俺はキリエの今の発言をどう思っているだろうか?
俺の中にある何かがキリエの発言への拒絶反応を起こしている。
「知っての通り、自殺は簡単なことじゃない。
時間をかけて心と体を作り込んでいかなきゃならない。
それが完成するのがいつになるかはわからないし、その前に別の理由で死ぬかもしれない。
だけど、私は前向きには取り組んでいくよ」
時間をかけて心と体を作り込んでいかなきゃならない。
それが完成するのがいつになるかはわからないし、その前に別の理由で死ぬかもしれない。
だけど、私は前向きには取り組んでいくよ」
拒絶反応が俺の口を借りて言葉を吐く。
「前向き、か……。
そういうのはむしろ、後ろ向きって言うんじゃないのか?」
そういうのはむしろ、後ろ向きって言うんじゃないのか?」
これは俺の言葉だろうか? それとも "世間の連中が言いそうな言葉" だろうか?
「そんなことはないと思うよ。
私から聞くけどさ、どうして生きることが "前" で、死ぬことが "後ろ" なの?
私には死へ向かうことこそ "前" のように思えるよ。
生きようとするなんて "後ろ" 向きなことだと思う。
だって、この世でどんな価値を手に入れてもそれはこの世のことでしかない。
富も地位も名誉も、生きてる間だけのこと。
人は必ず死ぬ。
この世で手に入れた大金を抱えて宇宙の果てまで逃げても死ななくなるなんてことはない。
さらに言えば、仮に死ななくなったとしても話は大して変わらない。
この世という限定された世界に閉じ込められた状態が永遠に続くだけ。
つまり、問題は寿命の長短じゃない。寿命があるってことはむしろ不幸中の幸いなんだ。
生きてる人間として意識がある限り、どうしたってこの構造から逃げられない。
うん。逃げられない。
やっぱり生きてるってのは "逃げ" なんだ。
もちろん、決して逃げおおせることはできない」
私から聞くけどさ、どうして生きることが "前" で、死ぬことが "後ろ" なの?
私には死へ向かうことこそ "前" のように思えるよ。
生きようとするなんて "後ろ" 向きなことだと思う。
だって、この世でどんな価値を手に入れてもそれはこの世のことでしかない。
富も地位も名誉も、生きてる間だけのこと。
人は必ず死ぬ。
この世で手に入れた大金を抱えて宇宙の果てまで逃げても死ななくなるなんてことはない。
さらに言えば、仮に死ななくなったとしても話は大して変わらない。
この世という限定された世界に閉じ込められた状態が永遠に続くだけ。
つまり、問題は寿命の長短じゃない。寿命があるってことはむしろ不幸中の幸いなんだ。
生きてる人間として意識がある限り、どうしたってこの構造から逃げられない。
うん。逃げられない。
やっぱり生きてるってのは "逃げ" なんだ。
もちろん、決して逃げおおせることはできない」