「人間は意志を持つ必要などない。
いや、それどころか意志を持つというのは全ての苦しみの元であり、間違ったことだ。
ではなぜ人間は意志などというものを持ってしまったのか?
だが、この問いは逆から考えるべきなんだ。
"なぜ意志があるか?" ではない。意志ある存在としての人間は、進化の歴史の中でこれまでに何をしてきたか?
このように問うと、見通しが開けてくる。
以前、科学館で同じような話をしたかもしれないけどね。
原始時代から現代に至るまでの文明の進歩は一体何のためだっただろう?
歴史や考古学の知見を紐解いてみれば、それは明らかだ。
人間が自らの意志を持たなくても済むようにすること。全てはそのためだった。
便利な道具。複雑な社会秩序。
神話。宗教。伝統。文化。常識。世間。
全ては人間が自分の意志で判断するということをしなくて済むようにするためのものだ。
そして人類はまだまだその発展の途上にあり、これから先の未来へもその道は続いていく。
今はまだ僕だけでなく少なからぬ人々が "自分の意志" などという未熟なものを抱えてしまっている。
だが、いずれ人は意志などという無駄なものを捨て去り、完全なる生きる機械へと進化するだろう。
キミにもわかるだろう?
意志を持つことは苦しいことだ。
心がある、ということが人間にとって最も根本的な過ちであり、克服すべき課題なんだ。
もちろんこんなことは僕がことさらに主張するまでもなく、誰もがわかっていることだ。少なくとも心の奥底ではね。
認めたがらない者もいるだろう。だがいずれにせよそれが人類の進化が向かっている方向だ。誰にも止めることはできない。
近代以降の人類は科学という力を手にし、いよいよ自分たちの意志を代替させる装置を実現しつつある。
"世間の目" という科学以前の時代に獲得していた能力も、いずれは不要になるだろう。
なにしろこれは個人差の大きい能力だ。その個人差ゆえに苦しみを多めに感じる者も少なくない。キミや僕のようにね。
だが科学は誰にとっても等しく使用可能な装置を用意してくれるだろう。
全ては必然的なことだ。
僕は未来が楽しみで仕方がないよ。
地球上の全ての人間が心を失くす。心のない人間だけが地上を動いている。地球上のどこにも心などという無駄なものが存在しない。
一日も早くそんな時代が来るといい。
早ければ早いほど、人々の苦しみの総量が少なくて済むのだからね。
だから僕は少しでもその進化を早めることに貢献できるよう、僕にできることを粛々と進めていくつもりだよ」
いや、それどころか意志を持つというのは全ての苦しみの元であり、間違ったことだ。
ではなぜ人間は意志などというものを持ってしまったのか?
だが、この問いは逆から考えるべきなんだ。
"なぜ意志があるか?" ではない。意志ある存在としての人間は、進化の歴史の中でこれまでに何をしてきたか?
このように問うと、見通しが開けてくる。
以前、科学館で同じような話をしたかもしれないけどね。
原始時代から現代に至るまでの文明の進歩は一体何のためだっただろう?
歴史や考古学の知見を紐解いてみれば、それは明らかだ。
人間が自らの意志を持たなくても済むようにすること。全てはそのためだった。
便利な道具。複雑な社会秩序。
神話。宗教。伝統。文化。常識。世間。
全ては人間が自分の意志で判断するということをしなくて済むようにするためのものだ。
そして人類はまだまだその発展の途上にあり、これから先の未来へもその道は続いていく。
今はまだ僕だけでなく少なからぬ人々が "自分の意志" などという未熟なものを抱えてしまっている。
だが、いずれ人は意志などという無駄なものを捨て去り、完全なる生きる機械へと進化するだろう。
キミにもわかるだろう?
意志を持つことは苦しいことだ。
心がある、ということが人間にとって最も根本的な過ちであり、克服すべき課題なんだ。
もちろんこんなことは僕がことさらに主張するまでもなく、誰もがわかっていることだ。少なくとも心の奥底ではね。
認めたがらない者もいるだろう。だがいずれにせよそれが人類の進化が向かっている方向だ。誰にも止めることはできない。
近代以降の人類は科学という力を手にし、いよいよ自分たちの意志を代替させる装置を実現しつつある。
"世間の目" という科学以前の時代に獲得していた能力も、いずれは不要になるだろう。
なにしろこれは個人差の大きい能力だ。その個人差ゆえに苦しみを多めに感じる者も少なくない。キミや僕のようにね。
だが科学は誰にとっても等しく使用可能な装置を用意してくれるだろう。
全ては必然的なことだ。
僕は未来が楽しみで仕方がないよ。
地球上の全ての人間が心を失くす。心のない人間だけが地上を動いている。地球上のどこにも心などという無駄なものが存在しない。
一日も早くそんな時代が来るといい。
早ければ早いほど、人々の苦しみの総量が少なくて済むのだからね。
だから僕は少しでもその進化を早めることに貢献できるよう、僕にできることを粛々と進めていくつもりだよ」
「それは……そうしたい、というのは、結局、おまえ自身の意志なんじゃないのか?
心をなくすなんて言いながら、結局 "そうしたい" という意志をおまえは持ってるんじゃないのか?」
「いいや違うよ。これは "みんなの願い" だよ」
やけに迷いなく、彼はそう言い切った。