「キリエは興味ないのか? バーチャルリアリティの体験マシン」
「うん。ないよ」
「へぇ……」
極めて自然に言い切ってくれる。
「わざわざバーチャル世界に行ってまでやりたいことなんてないよ。私は "この世界" だけでうんざり。
わざわざ世界を作り出すなんて、"すること" をわざわざ増やしてるだけだよ。そんなのは "この世界" だけでたくさん」
わざわざ世界を作り出すなんて、"すること" をわざわざ増やしてるだけだよ。そんなのは "この世界" だけでたくさん」
「すること?」
「うん」
「キリエには、したいことはないのか?」
することを増やしてしまうだけ?
バーチャル世界でやってみたいことはないのだろうか?
「何をしたって同じだよ。
何かをし始めたら、やり終えなきゃいけなくなる。
マンガを読み始めたら読み終えなきゃいけない。
映画を観始めたら観終えなきゃいけない。
ごはんを作り始めたら作り終えなきゃいけない。
ごはんを食べ始めたら食べ終えなきゃいけない。
バーチャル世界で何をするのか知らないけど、やり始めたらやり終えなきゃいけない。
することを一通りやり尽くしたら、"飽き" て、"現実" に戻ってくるのかな?
私はさっさと "現実" ですることをやり終えて、"現実" から卒業したいよ」
何かをし始めたら、やり終えなきゃいけなくなる。
マンガを読み始めたら読み終えなきゃいけない。
映画を観始めたら観終えなきゃいけない。
ごはんを作り始めたら作り終えなきゃいけない。
ごはんを食べ始めたら食べ終えなきゃいけない。
バーチャル世界で何をするのか知らないけど、やり始めたらやり終えなきゃいけない。
することを一通りやり尽くしたら、"飽き" て、"現実" に戻ってくるのかな?
私はさっさと "現実" ですることをやり終えて、"現実" から卒業したいよ」
「現実から卒業、って……バーチャル世界に遊びに行くってことか?」
「違うよ。死ぬってこと」
あまりにもあっさりと言ってのける。
冗談なのか本気なのかもわからない。
「もしも "あの世" があるとしたら、この世は "あの世" から見たバーチャル世界みたいなものってことなのかな?
死んでもまだ "あの世" で生きなきゃいけないんだとしたら "あの世" でもさっさと死ななきゃね」