「あの国って、少し前に選挙で大統領を選んだところだよね」
いつの間にか真横に皆月先輩がいた。
今は通学の時間帯であり、ここは駅前だ。先輩と会うことは不思議なことではない。
先輩の目は道路の向こう側のはるか遠くを見つめている。
そこには大きなビルがある。
一階のショーウィンドーのようなガラス板の内側に電光掲示板があり、どこか遠くの国の陰鬱なニュースを無機質に伝えている。
「選挙をしたってことは、みんなが望んでいることをしようということのはずなのに、どうして戦争になるんだろう?」
これは少し前に見たニュースと同じものなのかもしれない。そうではないのかもしれない。
いずれにせよ、特段珍しいニュースのようには見えず、詳しく見ていない俺には見分けをつけることができない。
「誰も望んでないはずなのに、どうして戦争になるんだろう。
折原くんは、どうして戦争が起きるんだと思う?」
折原くんは、どうして戦争が起きるんだと思う?」