「世界はこれからどうなると思いますか？」
「つまり、スマーティングシステムのこと？」
「ええ」
「このまま普及していくのは止められないでしょうね。
もう後には引き返せないところまで来てる。
社会の隅々にまでスマーティングシステムが行き渡っていて、スマーティングシステムなしでは社会が成り立たない。
たとえ誰か発言力のある人が止めようと言っても止められない。
すでに人間の意志を超えた勢いで地球全体を飲み込もうとしている。
今はまだ日本と他の主要国の一部だけだけれど、いずれは世界中に普及していく。
地域的なことだけじゃない。
今はゴーグルを装着しない限り、直接はスマーティングシステムの影響を受けずに済むけれど、 ゴーグルを使わない方法が開発中らしいよ」
もう後には引き返せないところまで来てる。
社会の隅々にまでスマーティングシステムが行き渡っていて、スマーティングシステムなしでは社会が成り立たない。
たとえ誰か発言力のある人が止めようと言っても止められない。
すでに人間の意志を超えた勢いで地球全体を飲み込もうとしている。
今はまだ日本と他の主要国の一部だけだけれど、いずれは世界中に普及していく。
地域的なことだけじゃない。
今はゴーグルを装着しない限り、直接はスマーティングシステムの影響を受けずに済むけれど、 ゴーグルを使わない方法が開発中らしいよ」
「ゴーグルを使わない方法？！」
「ええ。なんでも、電波を使って、人間の脳に直接情報を送り込むとか……空間に情報を映し出すとか……。
私には詳しいことはよくわからないけど……。
それが実現したら、きっと、どこにいてもシステムの影響から逃れられなくなる」
私には詳しいことはよくわからないけど……。
それが実現したら、きっと、どこにいてもシステムの影響から逃れられなくなる」
「そうですか……」
驚くには値しない。
恐るべきことではあるが、予測できることではある。
最初は携帯。次はゴーグル。じゃあその次は？ ということだ。
事態は否応なく進んでいる。人の意志を超えて。
そして、そもそもは人がその意志を捨てようとする試みから始まったことなのだった。
その試みが人の意志を超えて進んでいくのも当然なのかもしれない。
「今はまだ、ゴーグルを使わないでいることで自分の意志で生きるという選択が可能だけれど、いずれそれも難しくなる。
この地球から人間がいなくなってしまうのは時間の問題。
それがいいことなのか悪いことなのか、私は何も言えない。
確かなのは、人間自身がそれを選んでいるってこと。
誰に強制されるでもなく、人々がこぞってそうしてる。
だからきっとこれは、人類の総意、ってことなんだと思う。
もしも、人間を創った神様みたいなものがいるとして……その神様に向けて、"私たちは生まれてきたくありませんでした" って。
そう返事をすることにした。
そういうことなんだと思う。
そして私もこの地球に生きている人間である以上、その総意に関わっていることになる。
ならば私は人間の一人として、意志ある人間の一人として、私の分の責任を果たしていきたい。
今後何が起きるにせよ、そこにいる一人一人が幸せであって欲しい、と私はいつも思うのだけど……
こんなふうに思うことも、人間がいない世界では、意味のないことなのかな？」
この地球から人間がいなくなってしまうのは時間の問題。
それがいいことなのか悪いことなのか、私は何も言えない。
確かなのは、人間自身がそれを選んでいるってこと。
誰に強制されるでもなく、人々がこぞってそうしてる。
だからきっとこれは、人類の総意、ってことなんだと思う。
もしも、人間を創った神様みたいなものがいるとして……その神様に向けて、"私たちは生まれてきたくありませんでした" って。
そう返事をすることにした。
そういうことなんだと思う。
そして私もこの地球に生きている人間である以上、その総意に関わっていることになる。
ならば私は人間の一人として、意志ある人間の一人として、私の分の責任を果たしていきたい。
今後何が起きるにせよ、そこにいる一人一人が幸せであって欲しい、と私はいつも思うのだけど……
こんなふうに思うことも、人間がいない世界では、意味のないことなのかな？」
やはり希望はないのだ。
それでいて、絶望したって仕方がない。
かわいそうだねと言って慰めてくれるような人はどこにもおらず、仮にいたとしても役には立たない。
だからこその絶望なのだ。逃げ場がどこにもない。
自殺することもできない。ならば生きるしかない。
かと言って、希望と呼べるようなものは何もない。
あるのはただ、自分が人間であるという事実と如何に向き合いながら生きていくか？
そうした意志を持って過ごす死ぬまでの時間だけだ。
それでも俺は自分が人間であることを放棄したくない。
先輩もそれは同じだろう。
他の意志ある者たちもきっと同じであることだろう。
それは希望と呼べるようなものでは決してないのだけれど……。
「ねぇ、折原くんはこれからどうするの？」
「そうですね……」
希望があるわけではない。
それでも生きていくしかない。
絶望の中で、自分自身であり続ける。その上で如何に生きるのか？
「俺は俺で、できることを探しますよ。
そんなものは何もないかもしれないし、何かがあると思えるわけでもないですけれど……
だけど、俺も人間ですからね。あなたと同じ、地球上に意志を持って生きている人間の一人ですからね。
俺は俺の分の責任を抱えて生きていきますよ。
いや、生きるなんて言いつつ、ひょっとしたら、いつかそのうち自殺してしまうかもしれませんけど……」
そんなものは何もないかもしれないし、何かがあると思えるわけでもないですけれど……
だけど、俺も人間ですからね。あなたと同じ、地球上に意志を持って生きている人間の一人ですからね。
俺は俺の分の責任を抱えて生きていきますよ。
いや、生きるなんて言いつつ、ひょっとしたら、いつかそのうち自殺してしまうかもしれませんけど……」