そして日常は続く。
俺の意志とは無関係に地球は回り、日が昇る。
街が朝になり、動き出す。
無数の人々がそれぞれの位置でそれぞれに動き出す。
日常が営まれていく。
それは一体誰の意志だろう?
さっき目の前を歩いていった人の意志というわけではない。
今目の前を車で通過していった人の意志というわけでもない。
誰の意志でもない日常が、それでも続いてしまう。
何か気の利いたシメの言葉を言ったとしても、それで終わりにはならない。
手頃なエピソードを演じて、めでたしめでたしと幕を閉じても、それで終わりにはならない。
続いてしまうんだ。生きている限り。
たしかにそこにあるはずの無数の意志を飲み込んで、押し流して、誰のものにもならない日常が、相変わらず続いてしまうのだ。
終わらずに続く。
生きてしまうというのはそういうことだ。
そしていつか俺もこの意志を失ってしまうのだろうか?
怖いのは死ぬことじゃないんだ。心を失くしてしまうことなんだ。
だから俺はこの続いてしまう日々が恐ろしいのだ。