殺すとか、死ぬとか、いちいち話が極端だ。
いや、極端などではない。そういうことなのだ。
これは生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。
その上で俺は生きることを選んでいる。それがこういう結果を招くというのなら、では死ぬか?
そういうことなのだ。
「私は、どうすればいいの……?」
「そうだねぇ。いい方法を知ってるよ」
「いい方法……?」
「うん。もう二度と間違いをしなくて済むようになる、とっておきの方法」
そしてキリエは先輩の耳元でささやく。
「死ねばいいんだ」
「死ねばいい……」
「うん。生きてる限り間違いを犯し続けてしまう。それはこの地上で生きてる限り避けられない。
だから、死ねばいいんだ。
死んでこの世からいなくなってしまえば、もうそれ以上間違う心配もない。だよね?」
だから、死ねばいいんだ。
死んでこの世からいなくなってしまえば、もうそれ以上間違う心配もない。だよね?」
そういうことなのだ。
いや待て。本当にそうなのか?
何かがおかしい。何かがおかしいんだ。
どうしてこんな二者択一を突きつけられねばならないのか?
わかってる。そもそもの始めから話は理不尽なのだった。
なんで生きなきゃならない?
だからこうも言える。なんで死ななきゃならない?
死んじゃダメなのか? 生きちゃダメなのか?
生きるとは何だ? 間違うことだ。
間違っちゃダメなのか?
ダメに決まってるだろ? だって間違いなのだから。
そうだな。
ではやはり死なねばならないということか。
「私、死ねない……」
生きてやりたいことがあるというわけではない。
ましてや間違い続けたいわけでもない。
では死ぬのが嫌なのかと言われれば、そういうことではないのだ。
ただ、死ねないのだ。
その事実だけが何の意味もなく厳然と立ちはだかり、行動を妨げるのだ。
今思えば、宇宙空間に身を投げ出したことに比べれば、このようなたかが6階分の高さなどはどうということはない気がする。
だがここは地上だ。重力の真っ只中で身を縛る圧倒的な力がある。逆らえない。おそらくはこれが地上で人間として生きるということの限界なのだ。
そしてそれをこの人に強いてしまったのが誰かと言えば、この俺なのだ。
ならば俺は……。