"お客様がおかけになった番号は、電波が届かない場所にあるか、電源が入っておりません"
私は携帯端末を懐にしまった。
ぬいぐるみを胸に抱いて、顔をうずめる。
亮介、私は、おまえを理解すると約束した。
最後に訊いた質問を覚えているか?
私は覚えている。
"おまえは本当に存在しているのか?"
他人である以上、本当には理解できない。
他人というものが本当に存在するのかどうかさえ、私にはわからない。
だがそれでも、私はおまえを理解すると約束したんだ。
それなのに、本当にいなくなってしまったら、もう、おまえがどんな人間なのか、わからないじゃないか。