「亮介はマインドルを流行らせたいのか?」
なんだ?
睨まれているような気がする。
いや、知子のいつもの目つきだろうか?
「亮介はマインドルが支配する世界を望んでいるのか?
あらゆることの意味がマインドルを中心に語られる世界。
マインドルの腕前で人の価値が判断される世界。
そして、どんな犠牲もマインドルの名の下に正当化される世界。
亮介は、そんな世界を望んでいるのか?」
あらゆることの意味がマインドルを中心に語られる世界。
マインドルの腕前で人の価値が判断される世界。
そして、どんな犠牲もマインドルの名の下に正当化される世界。
亮介は、そんな世界を望んでいるのか?」
「いや、そんな大げさな……」
俺はただ、皆月さんとマインドルの話をしていただけ、の、つもりなのだが、 知子には何か別の意味が伝わってしまったのだろうか?
「油断するな」
その目は真っ直ぐに……どこを見ているのだろう?
俺を見ているようでもあり、空中を睨んでいるようでもある。
これも、いつもと同じと言えば同じのように思える。
「マインドルに価値を希求するあらゆる営みは、そういう世界につながっている」
「おいおい、俺はただ、いろんな人とマインドルができたらいいなーって、ちょっと思っただけだよ。
別にそんな深い意味はないって」
別にそんな深い意味はないって」
「深い意味はない、か。それこそが油断だと言うのだ。意志のない行動ほど手に負えないものはない」
マインドル?
きっと対象は何でもいい。
その腕前だけで、人の価値が判断される世界。
そんなものはもう嫌だと思ったはずなのに。
それさえあれば「それでいい」と言えるような、残酷だが、わかりやすく、そして純粋な世界を、 俺は今でも求めているのかもしれない。
だけど、そんなものはもう嫌だと思った。そのはずなんだ。確かにそう思ったんだ。