「ああ、愛しの二葉さん……一体どうすれば2人の運命を現実のものとすることができるのだろう……」
今日は朝から驚くことの連続だ。
知子が "モテモテ" でラブレターを頻繁に受け取っていること。
そもそも靴箱にラブレター、などということが実際にあるということ。
そして、そういう手紙を書くのはどういう男かと思っていたら、
いつも自分の真後ろの席にいる人間がその1人だったこと。
「忘れもしない、運命の出会いは入学試験の当日……。
それまで接点がなかった俺たち2人は運命によってついに引き合わされることになったのだ。
普段は冷静沈着な俺がその日はなぜか手元が狂い、試験開始直前に消しゴムを床に落としてしまった。
そして、身をかがめて消しゴムを拾おうとしたところに、そう、彼女はいたのだ。
俺と同じく消しゴムを落とした彼女は……」
それまで接点がなかった俺たち2人は運命によってついに引き合わされることになったのだ。
普段は冷静沈着な俺がその日はなぜか手元が狂い、試験開始直前に消しゴムを床に落としてしまった。
そして、身をかがめて消しゴムを拾おうとしたところに、そう、彼女はいたのだ。
俺と同じく消しゴムを落とした彼女は……」
純ヶ崎は大きなジェスチャーを交えて熱っぽく、知子との「なれそめ」を語っている。
非常に長い話だったが、要約すると、入学試験の日に2人とも消しゴムを落として、 お互いに相手の消しゴムを拾って交換した、ということのようだ。
「入学後、人ごみの中で俺たちは再会した。
だが心優しい彼女は俺に気を遣わせまいと、敢えて気付かないフリをしてしまう……。
そう、2人の運命を現実のものとすることは、この俺に課せられた役割なのだ」
だが心優しい彼女は俺に気を遣わせまいと、敢えて気付かないフリをしてしまう……。
そう、2人の運命を現実のものとすることは、この俺に課せられた役割なのだ」
どうやら純ヶ崎も、知子の外見的な様子に自分の幻想を当てはめているようだ。
世間ではおそらく、こういうのは「キモイ」と言われるのだろう。
だが、俺はそんなことが言える立場だろうか?
俺は知子を観察し、分析して理解したつもりで、何か役に立つことをしてやろうなどと考えて優越感に浸っていた。
それに比べれば、この純ヶ崎の気持ちの方が遥かに純粋ではないだろうか。
知子のことを正しく理解しているわけではないだろう。
だが少なくとも相手を見下そうなどという目的はないはずだ。
ああ、だめだ。
俺は今度は純ヶ崎のことを分析して優位に立ったつもりになっている。