「知子、私と来い!
研究は次の段階に進む。
マインドルのみが対人関係の支配原理。誰にも心を問われない、いいや、心など存在しない安息の世界を、私が創ってやる」
研究は次の段階に進む。
マインドルのみが対人関係の支配原理。誰にも心を問われない、いいや、心など存在しない安息の世界を、私が創ってやる」
夜の闇の中に教授の声が響いた。
風が吹き抜ける。
知子は教授に向けて、一歩踏み出した。
俺に背中を向けたまま、話し始める。
「亮介、私は他人の気持ちがわからない。
他人が何を考えているのか、わからない。
何をしていいのか、いけないのか。
いつも私の知らないところで話が決められていて、私の知らない理由で、私は悪いことをしていることになってしまう。
私の知らない間に、ルールのわからないゲームに参加させられていて、知らない間に負けたことにさせられてしまう。
他人の気持ちがわからない私にとって、他人とは、いつも、私にそのような理不尽なことを要求し続ける存在だ。心を持たない不可解な肉の塊と言っていい。
だが、こんなことを人に話せば、他人の気持ちや常識を理解できない私が悪い、としか言われないのだろう?
それこそ、私にとっては理不尽さの裏づけでしかないのだがな。
つまり、あの教授が言っていることは、まさに私が望んでいることそのものなんだ。
私には否定することができない。いいや、否定したくないんだ。
なぜならあれは、私そのものだからだ。否定など絶対にするものか。誰に何と言われようとも私だけは私を否定しないぞ」
他人が何を考えているのか、わからない。
何をしていいのか、いけないのか。
いつも私の知らないところで話が決められていて、私の知らない理由で、私は悪いことをしていることになってしまう。
私の知らない間に、ルールのわからないゲームに参加させられていて、知らない間に負けたことにさせられてしまう。
他人の気持ちがわからない私にとって、他人とは、いつも、私にそのような理不尽なことを要求し続ける存在だ。心を持たない不可解な肉の塊と言っていい。
だが、こんなことを人に話せば、他人の気持ちや常識を理解できない私が悪い、としか言われないのだろう?
それこそ、私にとっては理不尽さの裏づけでしかないのだがな。
つまり、あの教授が言っていることは、まさに私が望んでいることそのものなんだ。
私には否定することができない。いいや、否定したくないんだ。
なぜならあれは、私そのものだからだ。否定など絶対にするものか。誰に何と言われようとも私だけは私を否定しないぞ」
「知子、マインドルを受け入れろ。ここにおまえの望む世界がある!」
「亮介、私は教授の言うことを否定するつもりはないんだ。
だが私は……」
だが私は……」
知子が俺に振り向いた。
「私はここに、亮介、おまえを探しに来たんだ。
そして、あの世界には、おまえがいない。
私は、選ばなければならない」
そして、あの世界には、おまえがいない。
私は、選ばなければならない」