私はそれを手に取り、手の中で弄ぶ。
クレーンゲームのぬいぐるみの顔に乗せてみる。
サイズが合わなくて収まりが悪いが、押し付けて固定する。
「にゃー」
仮面はすぐにぬいぐるみの顔からずれて、机の上に落ちた。
うまくいかないな。いや別に、こんなことをうまくやってもしょうがないのだけど。
ぬいぐるみの顔に、仮面を密着させた跡が残っている。
私は仮面を脇へどけて、ぬいぐるみの顔を両手ではさんで、形を整える。
「にゃー」
人を知っているというのは、仮面をかぶせているようなものだ。
それらしい仮面を見繕って、相手に被せて、その人物のことを知っているつもりになる。
そのとき、私が向き合っているのは何か? このとき、私は、仮面に向き合っている。
仮面の向こうには何があるだろう?