「キミは知子が変だと思ったことはないかい?」
「いや、へ、変だなんて、そんな……」
変。
いきなりの露骨な単語に俺は戸惑ってしまったようだ。
被害者の立場で恐縮する必要などないと自分に言い聞かせた矢先にこの有様。
あるいはこの教授はわざと突飛な物言いをすることで俺を翻弄しているのではないだろうか?
だが「変」という言葉に戸惑うということは、俺自身、知子のことを「変」だと思っているということに他ならない。
だからこそ、角の立たない別の表現を探して戸惑うのだ。
「気にすることはない。知子はいわゆる『変な人』だ。
『多数派』は当たり前に通じるはずの会話が通じないことがある。当然のはずの常識がなかったりする。
だから『多数派』ではない『変人』なんだ」
『多数派』は当たり前に通じるはずの会話が通じないことがある。当然のはずの常識がなかったりする。
だから『多数派』ではない『変人』なんだ」
本人の身内でなければ許されない発言だろう。
いや、身内なら許されるのか?
自分の娘を「変人」などと。
謙遜している?
いや、謙遜ならなおのこと、もっと別の言い方がありそうなものだ。
「変人」ではただの悪口ではないか。
この教授が何を考えているのか、俺はますますわからなくなってきた。
「知子のような人間はときどきいる。
キミも心当たりがあるんじゃないかい?
クラスに1人ぐらい、いつも1人でいて、たまに話をしても、どことなく受け答えに違和感がある。そんな子に覚えはないかい?
顔つきや挙動にも、具体的に "どう" とは言いがたいが、それでいて一目でそれとわかる違和感がある。
まるで宇宙人が地球人に変装して紛れ込んででもいるかのような、ね」
キミも心当たりがあるんじゃないかい?
クラスに1人ぐらい、いつも1人でいて、たまに話をしても、どことなく受け答えに違和感がある。そんな子に覚えはないかい?
顔つきや挙動にも、具体的に "どう" とは言いがたいが、それでいて一目でそれとわかる違和感がある。
まるで宇宙人が地球人に変装して紛れ込んででもいるかのような、ね」
どこかで聞いたことのある話だ。
俺のクラスの連中が、知子のことを噂して言っていたのと同じだ。
そして……認めたくはないが、俺もその話には同意しているのだ。
「見たところ、キミにも少しその傾向があるようだがね」