「大丈夫なのか? また昨日みたいなことになったらどうするんだ?」
少女の背中はすでに視界の彼方に消えている。
キリエはじっと立ったまま答えた。
「いいじゃない。それならそれで」
夏の突き刺さるような熱気の中、キリエの声は冷たいほど明瞭に響いた。
「どうなろうと、それもあの子自身の選んだこと。
仮にこれで死んだとしたら、それまでの命だったってことだよ」
仮にこれで死んだとしたら、それまでの命だったってことだよ」
キリエが今どんな顔をしているのか、俺には見えない。
「周りにいる大人たちにとっては "言いつけを破って遊びに行く困った子" かもしれない。
だけど、これはあの子にとっては命がけの挑戦なんだよ。
ただ言うことを聞いて病室で大人しくしてるだけなんて、命の無駄遣いだよ」
だけど、これはあの子にとっては命がけの挑戦なんだよ。
ただ言うことを聞いて病室で大人しくしてるだけなんて、命の無駄遣いだよ」
自分の意志で、目的を決めて行動する。
そのリスクをこの世の誰よりも、他ならぬ、あの少女自身が引き受けた。
そしてキリエもまた、あの少女の選択を自分の身に引き寄せて受け止めたのだ。
キリエは今、まさに、あの少女に関わっている。
「そうか、じゃあ……」